消費税引き上げは
政権のスタンスの試金石
参院選後、消費税引き上げ論が大きな政治課題になっている。安倍政権は脱デフレを最重視し、少しでも経済にマイナス要因となるものを避けるとの観点から、消費税引き上げに慎重なスタンスをとり、その見極めをギリギリまで行うとされる。
筆者の知る海外ヘッジファンドのなかでは、「参院選後の株価の調整は、安倍政権の経済政策のスタンスの振れが原因」との見方も生じている。
現政権の消費税引き上げ慎重論の有力な論拠に、1997年の橋本内閣における消費税引き上げに伴うフィスカルクランチがあるとされる。97年のフィスカルクランチは、(1)消費税引き上げによる5兆円、(2)特別所得減税打ち切りによる2兆円、(3)社会保険料による2兆円と、合計9兆円、GDPの約2%分の負担が民間セクターにかかったとされた。
しかし、97年当時と環境は異なり、今日のリスクは消費税引き上げ先送りで財政規律への不安が生じることと筆者は認識する。
債務負担の重さで
1997年とは環境が全く異なる
筆者が97年と異なるとした最大の要因は、1990年代以降のバランスシート調整のプロセスにおいて、97年段階で民間セクターが背負った負担の重さが今日とは全く異なる環境にあることだ。
次の図表1は、日本のバブル崩壊後のバランスシート調整のプロセスにおいて問題となった、過剰な債務負担を段階的に「身代わる」状況を示す。90年代は民間の過剰債務が過大であり、その負担は次第に公的セクターに肩代わりされていった。日本の民間債務負担は1990年代初に頂点を迎え、97年は依然その水準が高いまま、丁度これから債務調整が生じ、民間セクターにさらにストレスがかかりだす段階だった。