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電子書籍時代を雑誌はどう生き延びるのか
――電子化はバックナンバーを活性化させる(後編)

待兼音二郎
2013年11月1日
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過去記事アーカイブの
ニーズは根強い

 「ヤマケイ・デジタルブックレット」の取り組みのように、記事の別売りとは他に、雑誌のバックナンバーを電子版で残したいというニーズもあるのではないか。紙の雑誌は溜めればかさばり、読み返したい記事も探しづらくなるからだ。

 じつは各誌とも、購読者向けにバックナンバーのサービスは実施している。週刊ダイヤモンドでは、定期購読者であれば2011年12月以降のバックナンバーをすべてウェブ版で読むことができ、1999年以降の過去記事を検索して個別にPDFで読むこともできる。

『新聞・テレビ最終決戦』(週刊東洋経済eビジネス新書No.08)はKindleストアで200円。「Nexus7」で表示したときに本文は70ページだった

 また週刊東洋経済では、定期購読期間中であれば1997年からの過去記事を検索してPDF/テキストで読めるサービスを実施しており、同社の他の雑誌(2007年以降)も同様に検索して一記事単位で買うことも可能だ。

 一方、一冊丸ごとのPDF版を提供しているのがWIRED誌だ。Vol.7以降(最新号はVol.9)の購読者向けに、本誌のPDF版を提供しているのだ。これは、同誌が季刊で、丸ごと溜め込んでもさほどデータ量が大きくならないからでもある。また、タダ読みの防止策としては「本誌を読まなければわからないランダムな質問を設けています」(コンデナスト・ジャパン デジタルマガジン事業開発マネージャー 安田敦氏)という。

 WIRED米国版はさらに進んでいる。アマゾンの「All Access」というサービスに参加しており、半年間の定期購読契約をすると、紙の雑誌にデジタル版が自動的についてくるのだ。CDを買うとMP3版がついてくる「AutoRip」の雑誌版ともいえるサービスだが、いずれ日本にも波及するかもしれない。

 また、週刊東洋経済の取り組みで興味深いのが、パソコン専門店「PC DEPOT」と提携して、3年間の電子版定期購読とタブレットをセットで売っていることだ。「読む意欲は高くても、設定が面倒くさいという方もおられます。手間をかけずにすぐに読めるこのセットは、そうした方に好評です」(東洋経済新報社 デジタルメディア局電子出版部 井川寛氏)という。

雑誌は、音楽CDと同じ道をたどるのか

 とはいえそもそも、ここまで電子書籍リーダーが充実してきているのだから、雑誌そのものを電子版に完全移行してしまえばよいのではないのか? だが現状では、それは夢物語に過ぎない。各誌とも、電子版の売り上げは紙版には桁違いに及ばない状況だからだ。

 そこに降って湧いたのが、記事のバラ売りという流れだ。ここで「バラ売り」という言葉に、妙な既視感を覚えた方はおられないだろうか? そう、CD単位での店頭販売から楽曲単位でのダウンロード販売にシーンが移行し、送り手の利益が激減した音楽業界のことだ。下手をすれば、雑誌も音楽と同じように記事単位に解体されて、本誌が有名無実化してしまうのではないか?

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