後は、競争環境も考慮する必要がありますが、こちらはあくまで副次的でよいと思います。たとえば、ネットワーク効果が効く“Winner Takes All(勝者が寡占化する)”市場であったり、地域ごとにいったん市場を押さえてしまうとひっくり返すのが難しい“陣取り合戦”のような市場であったりすれば、収益化よりもユーザや市場を獲得することを優先して、面を押さえにいったほうがよいかもしれません。
また、外部環境に関して言うと、描いた事業計画が、外部環境の何を前提にしているか、書き出すなどしてきっちり明示化して把握しておくとよいでしょう。逆に言うと、環境の何が変化すると成長シナリオを考え直さないといけないのかの分岐点を押さえておくということです。たとえば、GREEやモバゲー上にゲームを提供する計画であれば、仮説以上の速さでAppStoreやGooglePlayがゲーム流通として主流になっていくという変化を目にした途端、成長シナリオを再考する必要があります。または、スマホにおけるメッセンジャーアプリの領域がガラ空きという前提での成長シナリオであれば、LINEが爆発的に普及し、独占的な地位を築きはじめた段階では大幅な修正が必要です。重要なのは、事業の大前提となっている外部要因を、意識的にリスト化し、常に定点観測できるようにしておくことです。
3.成長シナリオ達成のナビとしてのKPI
そして、明日から直ちに行動をするうえで重要なのが、中長期的なゴール、成長シナリオから逆算して、今何をするかを決めることです。たとえば、3年目からマネタイズを目指すため、2年目はひたすら新規ユーザを獲得する、1年目は新規ユーザを流し込んでも貯まっていくように継続率をひたすら上げるという具合です。そして、中長期から逆算した短期戦略の裏返し=戦略の達成度を測る事業上最も重要な指標こそがKPIとなります。
このKPIを追いながら戦略の達成度を上げていくのが、「KPI管理」です。たとえば、継続率をひたすら上げるのが短期的な戦略であれば、1日、3日、1週間、2週間、1ヵ月の継続率でみたときに、インパクトが大きい期間が短い1日や3日などの継続率を、または自社プロダクト内でのステップ間の遷移を見たときに脱落率が高い所をKPIとして設定して改善していきます。当然KPIも、短期戦略が継続率を上げることから新規ユーザ獲得することに変われば、変化します。また、同じ戦略内でも、戦術レベルの話として、1日継続率が上げ止まったから、3日継続率をKPIとするという判断もあってしかるべきです。追うべきKPIは、短期戦略の変化、戦略の達成度のタイミングによっても変わるものなのです。一方で、KPIは常に「短期戦略の最も効率的な達成のためにという点から逆引きされるものである」という点は変わらないのですが。
その時、非常によくある過ちは、戦略には紐づかない一般的な指標、ユーザ数、継続率、課金率、平均単価などをKPIと呼び(もちろん戦略に紐づいているケースはそれらの指標はKPIとなり得るのですが)、単純にそれら指標の実績を追うことをKPI管理としているケースです。
成長シナリオを達成するため、短期的に達成すべき目標を「結果指標」として定義して、またその目標達成のための手段の指標を「プロセス指標」として定義します。そして、結果指標及びプロセス指標に対して予算を割り当て、日々の業務の中でPDCAを高速で回していき、数値を改善、達成していく。このプロセス全体をルーチンのオペレーションとして定着させていくことこそが、KPI管理の真髄です。
そして、いよいよ最初の試金石の資金調達にむけて
プロダクトがユーザに支持され、チームできてきた、そして中長期的な成長シナリオに基づいた足元のKPIの達成も順調……そうなるとグッと大きく成長するためには、ヒト、モノ、カネのリソースを確保することが、次の課題となります。リソースの確保――それは換言すると人を増やし、必要な設備を増やすために、資金を調達することに他なりません。次回からは、資金調達について触れていきたいと思います。
次回は11月12日更新予定です。