大手商社の三井物産が、米アップル製iPhoneに代表される次世代携帯電話に商機を見出している。

 具体的には、三井物産のベンチャー投資部門である三井ベンチャーズ(日本・アジア向け投資はMVC)が、iPhoneや米グーグルの携帯電話向けソフトウエア群「アンドロイド」などの次世代モバイルプラットフォーム上で稼働するサービス・ソフトウエアの開発ベンチャーに投資する。

 9月末までに、起業家や研究者などを対象に開発プランを募り、コンテストを開催。来年1月以降に優秀プランを選出し、将来有望な案件には三井ベンチャーズが出資し、事業化、育成まで手がけるというのだ。

 「出資から育成までの投資金額には上限を設けない。億円単位の案件も出てくるだろう」(長尾收・MVC社長)と鼻息は荒い。たとえば、iPhoneが弱いとされるセキュリティ分野のサービスなど、革新的なアイディアを発掘する構えだ。

 7月に日本を含む22ヵ国で華々しくデビューしたiPhone 3Gは、年内までに70ヵ国で発売され、累計出荷台数は1000万台を突破する見込みだ。

 世界の携帯端末市場約11.4億台に占めるシェアは1%にも満たないのだが、三井物産が商機ととらえるのはなぜか。

 これまで、日本では通信事業者が携帯端末の機能やアプリケーションサービスの裁量権を握ってきた。だが、昨秋にグーグルが「アンドロイド」の無償公開に踏み切り、3月にはアップルがiPhone向けソフトウエア開発キットの無償配布を決めた。

 後者のダウンロード数は25万件に達している。コンテンツプロバイダは、通信事業者も地域も跨いで、iPhoneなど次世代モバイルプラットフォームの広がりに相乗りして、自社コンテンツを世界中に普及させられるというわけだ。こうした携帯電話ビジネスの構造変化に、三井物産は目をつけたのだ。

 じつは米国では先行例があって、グーグルへの投資実績でも知られる有力ベンチャーキャピタル、クライナー・パーキンス・コーフィールド&バイヤーズが、3月にiPhone向けソフトウエアの開発ベンチャーに1億ドルを拠出する「iファンド」を設立している。

 翻れば、アップルやグーグルは、日米のベンチャーキャピタルを巻き込み、世界中の開発者を自らの土俵へと集結させようとしている。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 浅島亮子)