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阪急阪神ホテルズのメニューの虚偽表示問題がホテル業界を震撼させている。「うちも同じことをしていないか、お客さまに聞かれたときにきちんと根拠を示すことができるか、トップからの指令で見直しているところだ」と、大手ホテル幹部は声を潜める。
阪急阪神ホテルズは新阪急ホテルで芝エビの料理にバナメイエビを使っていたなど、23カ所のレストランや宴会場で47品目にメニューと異なる食材を使っていたと公表。「偽装ではなく誤表示」と強調した出崎弘社長(当時)は引責辞任に追い込まれた。
さらには、同社傘下のザ・リッツ・カールトン大阪で、フレッシュジュースに冷蔵ジュースが使われていたことも明らかになった。
今回の問題は、「社内の自主調査」(出崎前社長)で発覚したが、業界内は、「一昔前なら隠蔽したはず。内部告発などで世に出るよりは自ら公表したほうがダメージが少ないという判断があったのだろう」(大手ホテル)と戸惑いを隠せない。その後も帝国ホテルやJR四国系ホテルなどで表示偽装の自主公表が相次いでいる。
どのホテルにも可能性が
だが、どのホテルも表示偽装に手を染める可能性がある。
一つ目の理由は、メニューの表示に明確な規定がないことだ。食品や加工食品、生産者には不正競争防止法やJAS法で、産地偽装に罰則規定があり、食品表示も義務づけられているが、レストランはそのルールがない。そのため担当者の判断による拡大解釈が起きる可能性があるのだ。
法律としては景品表示法があり、実際よりも著しく優良であるかのように装って客を誘導する「優良誤認」があれば違反となる。問題は、優良誤認の解釈がわかりにくいことだ。