人生にもサッカーにも、ひたすら忍耐が必要な辛い時もあれば、リスクを冒して栄光を掴みに行かなければならない時もある。企業にとって、多くの失敗はそのタイミングを見誤ることに端を発しているのかもしれない。
前編と中編では日本サッカーリーグの専務理事である田口禎則氏の人生と日本女子サッカーリーグの浮き沈みを重ね合わせながら、ビジネスに通じるヒントを探った。まとめとなる後編ではこれまでの議論を振り返りながら、リーグ運営と企業経営の共通点、そして、「成功とは何か」について2人により深く掘り下げてもらった。
(構成 曲沼美恵/写真 宇佐見利昭)
長期出場停止処分で教えられた
支え、支えられることの大切さ
水越 お話を伺っていると、選手から監督になる際に必要なのは、選手時代に蓄積した経験そのものというよりは、その応用力なのかなという気がします。応用力があるからこそ幅広い人的ネットワークが活用できるし、ベースとなる知識や情報も、外の人たちからもらうことができる。ダメな管理職というのは、いつまでも昔の知識や経験にしがみついて、それを自分の部下にも押しつけようとするから、うまくいかないんです。
田口 そうかもしれません。JリーグのOB講話会では、現役選手たちによくこんな風に言うんです。「君たちはいつまでも元Jリーガーで生きていけると思うのか?」と。どんなにスター選手で活躍したとしても、現役でいられる期間なんて40歳そこそこまででしょう。ならば、そこから先の人生をどうやって生きて行くのか。元Jリーガーというプライドだけにしがみついて生きていたのでは、絶対につまらない人生になると思います。