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2030年のビジネスモデル

フィリピンの貧困街に100のビジネスを立ち上げる

齊藤義明 [ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]
【第13回】 2013年11月28日
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 既に、英会話事業以外に、コミュニティカフェとしてWAKU MAMA CAFÉを立ち上げている。このカフェは、「ラーニング・ジャーニー」という1週間のプログラムを通じて生まれたそうだ。

 ラーニング・ジャーニーは、日本から参加するメンバーと、貧困街のお父さん・お母さんが一緒に、それぞれのやりたいことを語り合いながら、一緒に事業を立ち上げていく、未来創造型旅行事業だ。期間は1週間、社会人向けのプログラムは、日本の株式会社ドアーズと恊働しており、参加費用は40万円とけっして安くない。

 山田さんによると、フィリピンと日本から集まったメンバーはそれぞれのライフストーリーを共有し、何に悩み、何がやりたいことで、それぞれ何ができるのか、ただひたすら語り合うのだそうだ。そうした分厚い相互理解と信頼の過程を経て、ジャーニーごとに事業が生まれてくるという。

上)スカイプを用いた英会話事業
下)美容サロン事業のトレーニング風景

 興味深いことに、日本からの参加者のスタンスが「何が足りなくて、何が必要なのか」といった従来型の援助発想の場合、一見効率的に見えて実はうまくいかないようだ。たとえ回り道に見えても、語り合いの中でそれぞれの人生を共有し、深いところで信頼でつながってから、それぞれができることを持ち寄り一緒に事業を作り上げていくというやり方が鍵だと山田さんは感じている。

 また山田さんたちは、この11月11日に美容院事業をスタートした。これに先立ち、2011年より、NPO全国福祉理美容師養成協会「ふくりび」と連携して、日本の美容師をフィリピンに招へいして、孤児院で子供たちの髪をカットしてもらったり、現地の大きなモールで子どもたちとファッションショーを行ったりしてきた。

 日本の美容技術はフィリピンのそれとは比較にならないほど高い。日本の美容師の最先端のカット技術を目の当たりにした孤児院の子供たちは驚き、将来美容師になりたいという夢をもった子供たちがたくさん出たそうだ。

 山田さんは、その子たちの夢を叶えるために今回、美容院、ネイル、マッサージの3つ複合機能を持った本格的な美容サロンを「ふくりび」と一緒に開設した。そこには日本からトップクラスの美容師が応援にやってくる予定である。

貧困街に起業キャンパスを建設

 さらに山田さんたちはビッグプロジェクトに動き始めた。ロレガという貧困街とミングラネリアという場所に、ラーニング、トレーニング、ワーキングの3つの要素をもった、就業能力開発と事業創造のための2つのキャンパスを建設するという。日本の大手民間企業からの資金協力も引き出した。

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齊藤義明
[ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]

ビジネスモデル研究者、経営コンサルティング会社勤務。政策・経営コンサルティングの現場でこれまで100本以上のプロジェクトに関わる。専門は、ビジョン、イノベーション、モチベーション、人材開発など。

2030年のビジネスモデル

未来のパターンを作り出す企業は、はじめは取るに足らないちっぽけな存在だ。それゆえに、産業の複雑な変化の過程で、その企業はときに死んでしまうかもしれない。しかし個別企業は死んでも、実はパターンは生き続け、10年後、20年後、新しい現象として世の中に広がる。2030年の日本につながる価値創造のパターンとは何か。現在さまざまな領域でその萌芽に取り組む最前線の挑戦者たちとのダイアローグ(対話)。

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