田中 最初は、どんなミッションを持って取り組んでいたんですか?

菅原 参画当初は、インターネット広告のサービス開発の部署にいて、当社の主力商品である広告のサービス設計をしていました。広告サービスの方は、メンバーでうまくPDCAを回せるようになったため、その後、私はCIO(=Chief Information Officer:最高情報責任者)をまかされました。システムエンジニアリングのところですね。続いて2005年からは通算6年間、子会社の社長をやりました。1社目が@cosmeに蓄積されたビッグデータを活用したコンサルティングの子会社(株式会社アイスタイル・マーケティングソリューションズ、2008年にアイスタイルが吸収合併)、そして、2社目がeコマースの会社(株式会社コスメ・コム)で、それぞれの会社の社長を3年ずつやったんです。美容に関する各種サービスを提供する中で@cosmeという化粧品レビューサイトが当社の主力事業ですが、現在、会員が約260万人いて、@cosmeを含むグループが運営する全サイトの来訪者が月間約8百万人いらっしゃいます。累積のレビュー投稿数が約1,100万件もありますので、今で言ういわゆるビッグデータの宝庫なんですね。

田中 ビッグデータを活用したビジネスを?

菅原 データ分析にもとづくコンサルティングビジネスは、ある程度のところまでは順調に伸びます。ところが、スタッフの育成と稼働率がビジネスを成長させるためのドライバーなので、労働集約ビジネスのために作る組織は人件費が重すぎます。プロフェッショナル・ファームの育成・構築は、ベンチャー企業のスピード感に合わないと判断し、結局、その子会社を本体で吸収しました。そして、次はEコマースの事業部を、規模の拡大に伴い独立採算でできるようにと分社化させました。分社化した会社はいきなり赤字を出しましたが(笑)、自分が社長を務める3年の間に黒字転換を果たし、営業利益率が10%出るようになりました。

役員なら誰でもCFOができる会社だった

保田 2005年から6年間、子会社の社長をされていたので、CFOに就任されたのは最近なんですね。CFO含みでアイスタイルに参画したわけじゃないということですよね?

菅原 CFOに就任したのは2011年4月です。当社の取締役はベンチャー企業の経営陣として入っているので、そのとき戦略上必要なところを誰かがやろうというゼネラリスト志向なんですね。実際、Eコマースの子会社の社長は、私の後任を佃が引き継いで、現在は高松が就任していますし、広告営業の担当役員も高松から山田、そしてまた、現在は高松に戻るといった具合にグルグル回っているんです。

保田 そのような状況で菅原さんがCFOに就任された経緯について聞かせてください。

菅原 上場するためには開示担当取締役、つまり、CFOが常勤で必要になりますよね。当社も本格的に上場を検討したときに「誰がCFOをやろうか?」という話しになりまして、「菅原はこれまで全部の事業を見ているから」というような消去法で私が選ばれたんです(笑)。当社の役員は、誰も資本市場での経験がありません。逆に、そこは誰がやってもキャッチアップできるだろうとの判断もあり、ジャンケンポンで決めたようなものです(笑)。

田中 上場準備を進めたけど、途中で取りやめたという経験があったそうですね。

菅原 はい。公開直前にこちらから取り下げているので、証券業界には大変なご迷惑をおかけしました。上場審査が終盤まで進んでいて、あと数週間後にいよいよ上場承認というタイミングで取り下げました。主幹事証券会社にとっては大ひんしゅくですよね(笑)。それでも、無理な上場をしたら、結果的に株式市場や投資家の方に多大な迷惑をかけてしまうと考えて決断したんです。

田中 それにしても、実質的にジャンケンポンで菅原さんがCFOになったとは(笑)。

菅原 そうなんです。当然向き不向きやキャリアの趣向性はあると思いますが、当社の取締役は、たぶん誰でもCFOができちゃうんじゃないかと思います。