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【データ分析と競争優位性】
なぜ、思いつきや勘だけで経営してしまうのか?

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第8回】 2013年12月27日
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「見える化」から「分析」へ

 企業の競争優位性に寄与する「分析力」について述べる前に、広い意味でデータ活用の取り組みに含まれる「見える化」と「分析」の違いについて明らかにしておこう。

 企業のデータ活用には、いくつかのレベルがある。ITを利用して何ができるか、という観点で能力を階層的に表すと【図表1】のようになる。最も低いレベルは、自社のビジネス状況を数量的に把握できていない状態である。例えば、キャンペーンのために顧客に来店を促す大量のメールを配信したが、その反応を何も把握していない状態である。一方、「メール配信後、来店客数・売上金額ともに10%上昇した」など、「何が起こったか、分かる」段階がその次のレベルとなり、これが「見える化」の段階といえる。

 これを一歩進めて、「特に10代の女性層で高い反応を示した」「以前にXという商品を購入した人からの商品Yへの注目度が高い」といった詳細な反応の理由を明確化できるのが次のレベルである。さらに「高い反応がどのくらい継続するか」「他の世代へも拡大するか」といった予測を行うことができ、最終的には、具体的なアクションをもって、ビジネスチャンスを拡大するところまでつなげていくのが「分析」の役割となる。

 「見える化」はここ数年、重要なIT戦略キーワードとして多くの企業において取り組まれてきた。しかし、このようにデータ活用の成熟度という観点から見ると、「見える化」は企業におけるデータ活用の最初の一歩にすぎないともいえる。

 「見える化」はデータ活用の最初の一歩にすぎないと述べたが、企業にとって重要な取り組みであることには変わりない。まずは、「見える化」によって事実を捕捉できなければ、次の段階の分析へとは到達できない。

 一方、分析という次のステップに進まずとも、見えた事実にタイムリーに対応することでビジネスへの貢献を果たせる分野も数多く存在する。そのため分析力の強化とともに、「見える化」の高度化も進めていくことが推奨される。

 高度化の方向性としては、「見える化」のリアルタイム化、詳細化、共有、自動化の4つが考えられる。これらにより、「何が起こったかが、分かる」という状況を進展させ、「特に意識することなく」通常の業務遂行の過程のなかで、何が起こったかが「すぐに」そして「詳細に」分かり、経営者から現場に至る「すべての」意思決定者が同じデータ(事実)をもとに判断し、一丸となって迅速にアクションを起こすことができる状態が「見える化」の究極の目指すべき姿といえるだろう。「見える化」への取り組みも、企業にとって終わりのないチャレンジであることに変わりはない。

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内山悟志
[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。2019年2月より現職。


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日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

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