歴史は繰り返す。2003年に胡錦涛・温家宝政権が正式に発足して、10月には対日外交新思惟(新思考外交)という外交方針を決め、中国は中日関係のさらなる緊密化、とくに未来志向の両国関係を作ろうと考えた。しかし、小泉純一郎首相(当時)の靖国参拝によって、新思考外交は不発に終わった。

2013年10月に習近平・李克強政権が成立し、周辺外交工作座談会が開かれ、対日外交の改善などが議論された。しかし、これも12月26日の安倍晋三首相の靖国参拝でほぼ不発になるばかりでなく、日中関係はさらに険悪になると思われる。今、中国では靖国参拝を日本の中国敵視政策のもっとも直接的な表現と見ている。安倍政権を相手とせず、さらに国内・国際世論を動員して反撃に出ようとしているのだ。(在北京ジャーナリスト 陳言)

 2013年12月26日午前10時(日本時間11時)。北京にある日本関連のコンサル企業の電話は、次から次へと鳴り始めた。30分後に安倍晋三首相が正式に靖国神社を参拝するという、第一報が入った直後のことである。

 マスコミの取材だけでなく、日本企業からの問い合わせもかなりあった。

 日本の評論家たちは、中国は参拝後の首相に対して、政治的な孤立対策を取るものの、経済の面ではほとんど影響はないだろうとコメントした。しかし、これは北京にある日系企業とはかなり見方が異なっている。小泉時代には、釣魚島(尖閣諸島)を巡る緊張関係はなかったが、今はいつ偶発的な衝突が起きても不思議ではない。東アジア以外の国際世論も決して靖国参拝を無視しない。日本の評論家たち、とくに中国を専門とする評論家の発言は、本当に現在の中国事情を見ているのだろうか。

 安倍晋三首相が靖国神社を正式に参拝した後、中国外交部の報道官は、定例記者会見で「中国指導者は今後、安倍首相と対話することはありえない」と述べた。さらに1月6日の伊勢神宮参拝後の記者会見で(靖国参拝の)「真意を直接、誠意を持って説明したい」と発言した安倍首相に対して、中国はまったく黙殺している。「首脳同士の面会はない」という言い方は、小泉元首相には使わなかった。とくに安倍政権を長期政権と見ている中国で、報道官があえてこの言葉を使ったことは、相当に厳しい対応だと感じられる。