安倍首相の靖国参拝で日中・日韓関係は一層悪化 <br />中東問題をめぐる米国の出方が世界情勢を左右<br />――田中 均 ・日本総研国際戦略研究所理事長たなか・ひとし
日本総合研究所国際戦略研究所理事長。1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公 益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課 長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。
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2013年は日本が大きな転換に踏み切った年だった。経済面では何と言っても「アベノミクス」に尽きる。黒田日銀が「異次元金融緩和」に踏み切り、10兆円を超える補正予算も手伝って、日本経済は回復基調に入った。さらに、2020年の東京オリンピック開催も決定、楽天の田中将大投手が24連勝という前人未踏の大記録を打ち立て、同球団は初の日本一にも輝いた。総じて日本経済には明るい雰囲気が戻りつつある。一方、安倍首相は年の瀬になって靖国神社に参拝し、日中、日韓との関係改善はさらに遠のいたようにみえる。

さて、新年はまず4月に消費税増税が実施される。景気への影響が懸念されるものの、財政再建には道筋がついたとは言い難い。さらに緊張高まる東アジア情勢に、安倍政権はどう対処するのか。2014年は午年。軽やかに駆け抜けることができるのか、暴れ馬のごとき年になるのか。経営者、識者の方々にアンケートをお願いし、新年を予想する上で、キーとなる5つのポイントを挙げてもらった。今回は、田中均 ・日本総研国際戦略研究所理事長の見通しを聞こう。

①北朝鮮の国内情勢が流動化し
朝鮮半島の緊張が拡大する

 張成沢労働党行政部長の処刑以降多くの人々の粛清が続き、国内情勢の流動化の兆しが見え出す。米韓及び日米の危機管理作業が始まり、中国も北朝鮮からの難民などに備え、国境周辺の人民解放軍の配備も本格化する。北朝鮮が崩壊するという局面には至らないにしても、当面北朝鮮の軍事的暴発を懸念する雰囲気は続き、朝鮮半島の緊張は高まる。