日本学生支援機構(旧日本育英会)が学生に支援する「奨学金」に関する問題が、話題となっている。産経新聞の取材によれば、奨学金返還訴訟は8年間でなんと約100倍(58件から6193件)にまで増えているというのだ。メディアで「奨学金を返せない」と嘆く学生・社会人の姿がたびたび報じられる一方で、若者に対して「自己責任では」「借りたものを返す自覚が足りないのでは」という厳しい声も上がる。「奨学金返済苦問題」の背景には、いったい何があるのか。その背景をリサーチすると共に、本質的な問題を解決するための策を考えてみたい。(取材・文/プレスラボ・小川たまか)
「学費の返済なんて無理ですよ!」
奨学金返済苦に嘆く若者たちの声
最近、ネット上の一部で話題になった動画がある。
「無理ですよ! 学費の返済無理ですよ!」
こんな声と共に、奨学金問題についてデモを行う若者の姿を報じた、毎日放送のニュース番組だ。「奨学金は返せないのか、返さないのか」と冒頭で問いかけ、返せない若者の現実をリポートしたものである。
実は、この番組が放送されたのは数年前であり、YouTubeに違法アップされたのも2009年2月のこと。だが、今年1月になってこの動画をある動画サイトが紹介したことで拡散。サイト上で「『返せない…』滞納が生む負のスパイラル、そしてビジネス化していく奨学金制度」というタイトルがついたこの動画を、最近放送された番組だと思って見た人も多いだろう。そう思わされるほど、「奨学金返済苦問題」は最近も繰り返し報じられている。
特に、産経新聞が昨年11月に報じた内容はショッキングだった。2004年に58件だった奨学金返還をめぐる訴訟が、2012年には約100倍の6193件になったというのだ。
「奨学金返済難民」は、なぜこれほど増えているのか。今回は、「奨学金返済苦」に陥る人々が増えている背景をリサーチすると共に、問題解決のための策を考えてみたい。