みずほフィナンシャルグループ(FG)が突如傘下のみずほ銀行の頭取人事を発表した。FG社長とみずほ銀行頭取を務める佐藤康博氏の実質的なワントップト体制は、わずか半年で終わり告げる。委員会設置会社への移行を表明し「過渡期」にあるこの時期に、なぜ頭取人事が決行されたのか。そこにみずほの苦悩と危うさが透けて見える。
ワントップ体制が崩れた瞬間
千代田区大手町1丁目にそびえ立ち、昨夏一時竣工した「大手町タワー」は、かつて富士銀行の本店が居を構えていた場所にある。ここに富士銀行の流れを汲むみずほフィナンシャルグループ(FG)が入居したのは昨年末のこと。地上38階建ての同ビルの31階に執務室を構える佐藤康博社長(61)は、1月17日の午後8時過ぎ、風邪による体調不良を押しながら、ある役員に会社に戻ってくるよう電話をかけていた。
金融庁の追加行政処分に伴って、業務改善計画を記者会見で発表した直後のことだ。会食中だった役員が急いでオフィスに戻り、佐藤社長から突如切り出されたのが、「4月から傘下銀行の頭取になってほしい」という打診だった。
「正直言って大変驚きました」。みずほ銀行の林信秀副頭取(56)は、当日のことをそう振り返る。林副頭取はかねてから、持ち株会社と傘下銀行のトップを分離し、経営の監督と執行を明確化することを行内で訴えていたが、「なぜ今頭取交代なのか」という思いが拭えなかったからだ。
火中の栗を拾うような打診に対して、林氏はその場ではすぐに返事ができなかった。その後、「二人三脚でがんばりましょう」と頭取就任に正式に応じたのは、3日後の週明け月曜日の朝だ。
昨年7月の傘下2銀行の合併で出来上がった実質的なワントップ体制が、わずか半年で崩れた瞬間でもあった。