2013年11月下旬に放映された『村上龍 カンブリア宮殿』では、ファッションセンターしまむらが取り上げられていた。「返品禁止」「再値引き禁止」「販売応援禁止」という三悪追放を掲げている企業であり、刺激を受けた視聴者も多かったのではないかと推測している。

 筆者も刺激を受けて今回、しまむらを取り上げるのだが、正直なところ同社は、経営分析の対象として面白味がない。業績が安定していて、分析結果にブレがないからである。

第124回コラムで取り上げたファーストリテイリング(ユニクロ)は、冬場は大きく盛り上がるものの、夏場は大きく落ち込む、という興味深い分析結果を提供してくれた。

 しかもそのコラムでは、短期的には増収増益を続けながら、長期的には増収「減」益に陥るという、並みの経営分析では解明できないネタまで指摘することができた。

 ところが、である。しまむらは優等生すぎて、その分析結果が平凡なのである。

 そこで一計を案じた。専業小売としての共通項を持つ洋服の青山(青山商事)を同じ土俵に上げて、「流通業界やサービス業界の原価計算や原価管理」の話をしたらどのようになるのだろうか。

「原価計算はメーカーの世界だけだ」「流通業界やサービス業界で『制度としての原価計算』を論じても意味がない」と考えている人がいるとしたら、その人はこの数十年間、まったく進歩していないといっていいだろう。

 では、いまから数十年前──具体的には1962年(昭和37年)──には何があったのか。企業会計審議会が『原価計算基準』を制定した年である。

 日本には無数の会計基準が存在するが、この『原価計算基準』は唯一、いままで一度も改定されたことがないという「カンブリア紀の会計基準」なのである。流通業界やサービス業界で原価計算を語るのは意味がない、という人は、1962年(昭和37年)以降、化石とともに暮らしてきたことになる。

カンブリア紀に編み出された
原価計算制度

 まずは、しまむらの決算データを利用して、1962年(昭和37年)以降、まったく進歩していない「カンブリア紀の会計基準」を簡単に紹介するところから始めよう。