昨年末に安倍首相が行った靖国神社の電撃参拝は、中国・韓国はおろか、同盟国の米国からも批判を浴びた。今や靖国参拝問題は政治・外交における最大の火種の1つとなってしまった。足もとでも靖国参拝を巡る報道や賛否両論は途絶えることなく続いている。しかし考えてみれば、我々一般人はこの問題の背景をわかっているようでいて、実はよく知らない。靖国神社とはそもそもどんな神社なのか。首相がそれを参拝することは、それほどいけないことなのか。専門家のレクチャーを交えながら、「問題の論点」をこのへんで改めてわかり易く整理してみたい。(取材・文/高橋大樹)
安倍首相の電撃参拝で大論争に発展
極東の1神社がなぜ国際問題の渦中に?
「安倍晋三首相には、もう靖国神社を参拝しないでほしい」
米国政府が日本政府に対してこうした確約を求めていることが、先日米紙によって報じられた。
靖国神社は東京都千代田区にある神社。それを日本人である安倍首相に対して「お参りしないでほしい」と外国政府が要請するなど、考えてみれば摩訶不思議な話である。このニュースの信憑性がどれほどのものかわからないが、事情を知らない人が聞けば、「内政干渉にもほどがある」と思うかもしれない。
しかし、靖国神社を巡る問題については、そうは言っていられない事情がある。一連の騒動は昨年12月26日、安倍首相が突然靖国神社を参拝したことから始まる。現職総理としては、2006年の小泉首相以来7年ぶりの参拝となる。
この行動に対し、中国と韓国の2ヵ国がかつてないほど激しい懸念を表明したのだ。さらに2001~2006年当時に、小泉首相が6度にわたり靖国神社を参拝した際には沈黙を貫いていた米国までもが、今回は「失望」の意を表明している。
今や靖国参拝問題は、国内問題を超え、政治・外交における最大の火種の1つとなってしまった。安倍首相の「電撃参拝」から1ヵ月あまり、足もとでも靖国参拝問題を巡る報道や賛否両論は途絶えることなく続いている。