部下に「話しにくい」と感じさせてしまう要因のひとつが、話の途中で口を挟んでしまうことです。なぜ話の途中で口を挟んでしまうのでしょうか。忙しいからでしょうか、それとも早く要点が知りたいからでしょうか。

 途中で口を挟んでしまう上司は、時間が山ほどあっても話を遮ってしまうものです。「忙しいから」は言い訳にすぎません。「早く要点が知りたい」と思うのは、話のプロセスよりも結果を重視しているからです。

 例えば、新商品をどうやって売込めばいいのか悩んでいる部下が、あなたのところへ相談にきたとしましょう。

 部下が、新商品の技術的な特徴、市場性、価格などについてどんな話をしたのか、いろいろな角度から取引先とのやりとりを報告している時に、「価格は○○円まで値引きしてもいいと言っただろう」「マーケティング部のデータを有効に使って市場性が高いことを説明したのか」などと、途中で口を挟んでしまったら部下はどう感じるでしょうか。きっと、「こんなに苦労して売り込んでいるのに少しもわかろうとしてくれないのか……」とがっかりしてしまうことでしょう。

 途中で口を挟んで「それは違う」「そこはこうすべきだ」と言ってしまうのは、いわば部下のプレーをひとつひとつジャッジしているようなものです。

 スポーツはひとつの試合のなかにさまざまなプレーがあります。そのひとつひとつのプレーがつながって、試合に勝つという目的が達成できるのです。最初のシュートを外した選手が、その失敗を活かして、2度目のシュートをきっちり決めることもあります。

 仕事も同じです。ひとつのプレーの結果が、たとえ不成功に終わったとしても、そのプロセスのなかに次につながる収穫を見出せることもあります。

 部下は部下なりに失敗から学び、次に活かそうとしています。部下が失敗から何を学んだのか、次にどう活かせばいいか話そうとしている時に、「こうすれば失敗しないのに」と口を挟んでしまったら、部下は話そうという気をなくしてしまいます。

 部下の話は最後まで聞くと決めてください。すべてを聞いてから質問しても遅くはありません。最後まで話を聞いてくれる上司には、部下は安心して話すことができます。

 上司が部下のプレーをひとつひとつジャッジする審判員になってしまうと、部下はミスを犯さないことばかりを気にするようになります。その結果、すべてにおいて上司の指示を求め、自発的に動こうとはしなくなります。

 上司は部下の言動をジャッジする審判員ではなく、相手が自発的に動けるように導くコーチとして質問してほしいと思います。