(3)本人の準備と心構え:向こう10年の働き方と収入に対して展望を持たせる

 このケースから学ぶことは、役定以降のキャリアステージについて、上司と本人が働き方や、貢献テーマについて話し合い、自分の働き方がわかれば、向こう10年の展望を持たせられるということだ。

 このステージに沿って、働き方や成果期待、その報酬についておおよその理解があった上で、シニアは自分の経験や能力の何が活かせるか、新たな職場で配慮すべきことは何かを想像できるのだ。上手な下山の仕方とあわせ、そもそも下山のルートはどのようなルートがあるのか、最低限これを示しておかないと、貢献しつつ下山する具体的なイメージはつかみにくい。

 何年も先の仕事を想定することは困難かもしれないが、シニア活用の方針や役定後の仕事イメージも示さず、定年後のキャリアビジョンを考えよ、といってもそれは地に足の着かない希望のビジョンや、蕎麦屋の開業など的外れのビジョンを助長することにもなりかねない。

 65歳雇用を見据えたシニアの戦力化は、将来の働き方や貢献を考えさせる指針を示した上で、会社として今後の自己活用を考えさせる一歩リードしたアプローチが必要だろう。

役定前でもスキル・やる気はアップする!
シニアを戦力化する方法

 シニアの戦力化で見落とせないのは、その知識・スキルと経験だ。役定・定年後の働き方は、それまでの働き方や期待とは異なる。そのまま活かせる経験やスキルもあれば、新環境にあわせてそれらを組み替えたり、抑制しながら仕事と組織への適合を図っていく必要もある。あらたな仕事能力の獲得や人間関係の構築など、この適合を容易にさせる「変化適応能力」が必要だ。

 知能は一般的に、20歳代でピークに達したあとは低下すると考えられてきたが、最近の研究では、知能には「流動性知能」結晶性知能」とがあり、それぞれ加齢による衰えの変化に違いがあることが解明されている。

 流動性知能は、どちらかと言えば新しい言葉や機器操作の使い方を覚えたりするような暗記、早い習熟に適した能力でテクニカルスキルに相応する。50代・60代になるとこの知能は低下する。

 一方、結晶性知能は、判断力、理解力など過去に習得した知識や経験をもとに、ある状況での問題を解決する総合的能力でヒューマンスキル+コンセプチャルスキルに相応するものだろう。この結晶性知能は60歳、70歳になってもそう衰えるものではないといわれている。

 シニアの活用は、過去の経験が蓄積されたこの結晶性知能をベースとし、これに新たな仕事の専門知識を“復習する”ことで現実の仕事能力を獲得し、過去の経験を活かしながら、与えられた仕事で相応の成果を生むようにしたい。変化適応能力は、この結晶性知能を基層として、これに新たな仕事能力・スキルの層を積ませることで上手く作られていくのではないだろうか。

 シニアの戦力化でもう1つ見落とせないものは、仕事のモチベーションだ。これまでのファーストキャリア期は、昇進・昇格・昇給等の上昇志向のモチベーション=将来のために働くことが支えになり、またそれを目標として頑張ってきた方がほとんどだろう。