旭硝子が、急速に業績を悪化させている。高収益を誇った電子事業が利益を落とし、建築用ガラス事業に至っては赤字に転落した。利益構造を転換しない限り、かつての輝きは取り戻せない。
「2013年12月期について、当期純利益予想を500億円から100億円に引き下げる」
7月31日に発表した決算下方修正に株式市場は動揺し、翌日の株価はストップ安となり53円安の582円をつけた。
わずか3年前の10年12月期には当期純利益1232億円、営業利益2292億円という巨額の利益を出してわが世の春を謳歌した旭硝子が一転、塗炭の苦しみを味わっている(図(1))。営業利益は3期連続で減少する見通しだ。
下方修正の直接の原因ははっきりしている。欧州の建築用ガラスが単価・販売数量共に大きく想定を下回り、ガラス事業全体が赤字化した(図(2))。
旭硝子は、建築用ガラス、自動車用ガラスで世界トップクラスのシェアを持ち、薄型テレビなどに使われるTFT液晶用ガラス基板は2位のシェアを誇る。ただし利益構造はいびつだ(図(1))。
12年12月期の営業利益929億円のうち、約9割に当たる813億円はTFT液晶用ガラス基板などの電子事業が稼ぎ出し、化学品は145億円にすぎない。建築用、自動車用ガラスなどのガラス事業は40億円の赤字だ。
かつて利益創出は各事業のバランスが取れていたが、近年は電子事業に頼りきり。その電子事業の稼ぎが落ちてきたところに、ガラス事業の赤字化が重なった。