同時に、課題も見えてきていると語る。

「しかし、改善点もまだまだある。我々が昨年実施した調査では、イギリス国内における障害者スポーツの主要な競技団体の運営に、障害者がほとんど携わっていない現状が明らかになった。障害者スポーツを取り巻く環境に構造的な問題が存在することは否めない。2012年以降に改善されたものも多いが、ポジティブな空気が続く今のうちに取り組むべき問題もまだ残っている」

ロンドン大会が鮮明にした
予算配分における明と暗

 限られた予算のなかで、障害者スポーツにどれだけの額が分配されるのかという点は、日本も含めた世界に共通する課題であろう。

 前出のプリング編集長は2016年にブラジルのリオデジャネイロで開催されるパラリンピックに向けて、英政府が捻出する強化予算の仕組みについて語る。

「ロンドン大会での成功体験から、パラリンピックに出場する競技団体への助成金は大幅にアップした。リオを目指すパラリンピック選手や各種競技団体への助成金はロンドン大会前と比較して43パーセントも増加しており、オリンピック関連予算が5パーセントしか増えていないことを考えると、その差は歴然としている。強化予算は文化・メディア・スポーツ省と宝くじ協会が捻出しているのだが、全ての競技団体に平等な形で分配されるわけではない。

 ロンドン大会で上位を狙える競技がはっきりしたため、皮肉にもイベントとしては成功を収めたロンドン大会が、競技団体間での予算格差を生み出す触媒的存在になってしまった部分もあるのだ。ロンドン大会で好成績を収めた陸上やセイリング、射撃といった競技に対する予算は大幅にアップしたが、逆にシッティング・バレーボールや車いすフェンシングといった競技への予算は大幅にカットされてしまった。

 ロンドン大会があったからこそ、障害者スポーツへの理解や支援が大きく増え、パラリンピック関連の予算がアップしたのも事実。しかし、競技によって助成金の額が大きく異なる現状や、スポーツをしない障害者に対する福祉予算が大幅に削られ始めているイギリスの現状にはなかなかスポットが当たらない」

 大成功を収めたようにも思えるロンドン・パラリンピックだが、その後の障害者スポーツを取り巻く環境には明と暗の両方が存在するようだ。