また、横断幕を作ったサポーターもそうした意図はなかったようだ。スタンドやピッチから見られる観客席ではなく、観客が入場するゴール裏応援席の入場ゲートに貼られていたのだ。クラブの聞き取り調査に当のサポーターは「ゴール裏は自分たち熱烈なサポーターの聖域で部外者には入ってほしくない。最近は外国からの観客も増えているが、そういう人たちに応援の統制を乱されるのが嫌だった」と答えたという。各クラブのサポーターには、それぞれ独特の応援の掛け声(チャントという)がある。言葉や掛け声、身振りなどが一致した一体感のある応援をしたいというのが彼らの望みであり、それを知らない人(外国人)に入られては困るというわけだ。このメッセージはサポーター席に入る観客に向けられたものだったのである。

 しかし、サポーターズエリアのような自由席は本来入場料を払った人なら誰もが入れる領域。熱烈なサポーターといえども、それを勝手に制限する権利はない。また「〇〇 ONLY」という言葉には人種差別が激しかった頃の南アフリカで掲げられた「WHITE ONLY」を想起させるものがある。そうしたニュアンスを含むメッセージを深い考えもなしに作り、掲げてしまうところに人種差別に鈍感な日本らしさが感じられる。

スポーツのグローバル化で
人種差別問題も顕在化

 もちろん日本にも差別はある。江戸時代の身分制度を引きずった差別やアイヌ民族、朝鮮半島出身の人たちに対するものなどだ。が、多くの民族が暮らすアメリカや他の国と国境を接している国のような厳しい民族の対立や、それに端を発する人種差別は比較的少ないといえる。

 プロ野球には昔から外国人選手がいたが、日本選手以上にリスペクトされてきたし、国技といわれる大相撲でも強い外国人力士と対戦する日本人力士を応援する心情はあるにせよ差別意識はなかった。そんな意識があったら外国人力士が上位を占める今の大相撲は成り立たない。もちろん観客に関しても外国人ウエルカムだ。新たなプロスポーツとして21年前に誕生したJリーグにもその伝統は受け継がれ、性別・年齢・国籍を問わず誰でも安全に安心してサッカーを楽しめる世界に誇れるリーグになった。スポーツファンにとっては幸せな国なのだ。