◆アメリカ勢の後退と欧州勢の躍進は
「世界がアメリカに追いついた」せい?

 かつてのテニス王国アメリカの成績が落ち込み、それに代わってスペインやフランスなどの欧州勢が活躍するようになったのはなぜなのだろうか。

 アメリカのテニススクールを視察してきた知人に聞いてみたところ、アメリカでテニス人気が落ちたり、競技人口が減っているということは感じなかったそうだ。そこから考察すると、アメリカが落ち込んだというより、欧州などの他の国のレベルが上がったのではないかという。

 どの国よりも早く、少年時代からの選手育成システムを取り入れたのはアメリカだ。それによって国全体のレベルが上がり、そこから多くのトップ選手が生まれた。もともとテニスの強豪国だったスペインやフランスも、そうした育成システムを取り入れ、最近になってその成果が出てくるようになった。多くの国のレベルが上がったことで、アメリカもなかなか勝てなくなったのではないか、という説である。

 今でもテニス選手の育成システムにおいてアメリカは世界のトップにある。たとえば錦織が学び実力をつけたテニス選手の養成機関『IMGニック・ボロテリーアカデミー』。これまで男子ではベッカー、アガシ、サンプラス、クーリエ、女子ではヒンギス、セレシュ、シャラポワ、クルニコワなどのトップ選手を輩出してきた。テニスはもちろんトレーニング指導のエキスパートが揃っており、アメリカだけでなく世界中からトッププロを目指す選手が集まってくる。

 このアカデミーでは他の国の選手が伸びることでアメリカの選手が勝てなくなることなど厭わず、入校したすべての選手の力を引き上げようとするという。また、アメリカのテニスファンも、それに対して文句を言わない。こうした懐の広さによって、各国の選手のレベルが上がり、さまざまな国の選手がトップを争う構図が生れたといえるのではないだろうか。