関節の先端を覆っている“関節軟骨”が、すり減ったり変質する病気を「変形性関節症」という。

 昔は日本人には少ない病気とされていたが、1980年代から患者数が増え続け、現在では少なく見積もっても700万人の患者がいると推定されている。

 関節の中でもよく動く場所、首や股、ひざ、指などの関節に起こりやすい。最も多いのは「変形性ひざ関節症」だ。初めはひざに違和感を感じたり、少し痛む程度なので見過ごされがちだ。

 しかし、放っておくとだんだん痛みが取れなくなり、しゃがむと立ち上がれなくなる、痛みで歩けない、といった不自由が起こる厄介な病気といえる。

 痛みに対しては、抗炎症鎮痛剤などが処方される。最近は、痛み止めの代わりに「グルコサミン」というサプリメントを使う整形外科医も出始めている。

 グルコサミンは、カニやエビなど甲殻類の殻のキチン質から精製したもので、ヨーロッパでは医薬品として認可されている。日本では栄養補助食品の扱いだが、大学や研究所で、その効果の基礎研究や臨床試験が現在行なわれている。

 薬理効果のメカニズムは、まだ十分に解明されていない。しかしグルコサミン摂取によって痛みが緩和されることは、臨床の場ではよく知られている。

 グルコサミンが炎症に関わる好中球(免疫細胞の1つ)の働きを抑えるので、炎症が改善され、痛みが少なくなるのではないかと考えられている。またグルコサミンは、そもそも軟骨の原料の1つなので、損傷した軟骨の修復を早めているという仮説も立てられている。

 日本で最初にグルコサミンに注目したのは、健康情報で知識を仕入れた患者の方だった。その後、患者に促されるように医者たちが治療に取り入れるようになったという経緯がある。最近では、日本膝関節学会などでも積極的に研究発表が行われている。自然由来の原料を使っているので、副作用がほとんどないのも患者にはありがたいといえる。