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スマートフォンの理想と現実

モバイルの高度化は構想から実現、普及へ
いよいよ動き出した産業の地殻変動

――モバイル・ワールド・コングレス(MWC)2014レポート【後編】

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第60回】 2014年4月10日
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Firefoxの理想とTizenの生き残り

 MWC2013以降、注目を集めている「スマートフォン第3のOS」だが、今年はある意味で雌雄が決した状況だった。

 昨年注目された「Firefox対Tizen」という観点では、プロダクトまで辿り着いたFirefoxと、日の目を見ることがないTizenとを比較すれば、どちらが第3のOSたり得たのかは、火を見るよりも明らかである。実際にFirefoxは欧州でのサービスインを皮切りに、中南米で一定のシェアを獲得し、世界市場で浸透しはじめている。日本でもKDDIが今年端末を投入すると見込まれている。

 ただしFirefoxは、ビジネス環境やエコシステムを作っていくことが、必ずしも得意ではない。通信機能は、手を貸している通信事業者が開発しているし、プラットフォームに欠かせない決済・認証についても、外部事業者にかなりの部分を委託している。そもそも彼らが目指しているのは、W3Cが策定するウェブの技術標準を忠実に実装すること。その理念は社会的に意義のあるものだが、産業を力強く牽引していこうというスタンスではない。

 もしかすると、それこそが彼らの狙いなのかもしれない。ウェブブラウザの世界で、IEやChromeが大きなシェアを確保する一方で、マイナーでありながらもリファレンスモデルとして正しい位置を確保しようとするMozilla Firefoxがあるように、Firefox OSもスマートフォンのおける参照モデルを提唱しようとしているのではないか。

サムスン電子のスマートウォッチ Photo by Tatsuya Kurosaka

 実際、ウェブとスマートフォンの接近は、それこそGoogle自身がAndroidとChromeの統合を模索するなど、非iOS側では大きなトレンドとなりつつある。見かけ上はネイティブアプリだが、ブラウザのSDKを叩いているだけというWebアプリも、少なからず存在しているように、両者の関係は徐々に近づいていくだろう。そうした中で、Firefoxがウェブ標準として果たす社会的な役割は、今後大きくなるのかもしれない。

 一方のTizenは、既報の通りNTTドコモが端末開発を事実上中止するなど、端末OSとしては「勝負あった」といえる。しかし開発陣はそれを折り込んでおり、ウェアラブル方向に進もうとしている。今回サムスン電子のスマートウォッチでTizenが動いていたが、おそらくこの方向へと進むのだろう。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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