「仏の顔も3度まで」とはよく言いますが、この日Aさんは、珍しく2回目のミスまでキツく叱らないようにしていたように見えました。それゆえ、3回目のミスが起きて怒りが沸点に達してしまったのかもしれません。
ただ、さすがのTさんにもその言葉は堪えたようで、うなだれて、涙ぐんでいるようにさえ見えました。この様子は、社内会議の最中に起きたので同僚全員が見ていましたが、どのように声をかけていいのかためらっているうちに、Tさんは帰ってしまいました。
上司の同僚への暴言
告げ口すべきか、すべきでないか
なんとなく、Tさんをフォローできなかった反省も含めて、同僚たちの大半はオフィスを出て飲みにいくことになりました。そこで話題に出たのは、当然ながらTさんについて。
「確かに、あいつも同じ失敗を何回も繰り返すから叱られるんだよ」
まず、こうして話題を切り出してきたのは、入社10年目のHさん。すると、それに同調する意見もありましたが、
「ただ、あそこまで突き放されると落ち込む度合が半端じゃないよね。明日は出社してくるだろうか?」
と、Tさんの明日の出社を心配する入社6年目のSさんのような意見も出てきました。それから、話題は行きつ戻りつし、1時間くらい経過したときに、
「でも、考えたらAさんの対応はパワハラじゃないの。コンプラ的にまずいんじゃないの?」
と入社8年目のTさんが発言。さらに、社内の倫理規定でパワハラにあたるからコンプライアンス相談室に伝えるべきとまで断言しました。確かに社内のコンプライアンス相談室から配布された資料には、
<自分だけでなく、同僚がパワハラに遭っている状況についてもつぶさに相談の連絡をください>
と書かれています。