いよいよ、2014年7月1日より(内容の一部は4月1日より)改正生活保護法が施行される。
改正生活保護法の成立にあたっては、生活保護の申請権が侵害されないよう配慮を求める内容が修正案に含められた。また、生活保護法改正をめぐっての国会での審議では、再三、政府により「運用はこれまでと同じ」「運用は変えない」という答弁が行われた。
しかし厚労省は、2月、改正生活保護法の運用の実際を定める省令案を公開した。この省令案は、運用を大きく変化させ、生活保護の申請権を大きく侵害する可能性を含んだ内容であった。
それに対して、数多くの人々が問題点を指摘し、パブリック・コメント(パブコメ)を政府へと送付した結果、4月18日、大きく内容を変更された省令が公布された。
そこで今回は予定を変更し、この省令成立の経緯と背景、省令案変更の意味について考えてみたい。
(参考:省令案の問題点を指摘した政権ウオッチ編・第56回
『運用は変えない」はやはりウソなのか?改正生活保護法・省令案から見えた厚労省の表と裏』)
国会答弁の「運用は変えない」を具体化した
改正生活保護法省令案
2014年4月18日、官報に「厚生労働省令第五十七号」が掲載された。この省令は、2013年12月に成立した改正生活保護法に基づき、生活保護法施行規則の一部を改正する内容である。生活保護法施行規則は、生活保護法の運用の実際、つまり生活保護制度の実現のありかたを定める重要な位置づけにある。日本国憲法第25条の生存権規定の精神が、生活保護法によって実体ある制度として実現され、さらに施行規則が「当事者にとっての憲法第25条と生活保護法」を定めている、というわけだ。この厚労省令第五十七号は、たとえば生活保護の申請に関しては、
「保護の開始の申請について、申請者が申請する意思を表明しているときは、当該申請が速やかに行われるよう必要な援助を行わなければならない」
など、自治体に対して申請権を侵害せず申請を援助することを求める内容となっている。
しかし、2014年2月17日、「電子政府の総合窓口(e-Gov)」で公開された当初の省令案は、最終的に公布された厚労省令第五十七号とは似ても似つかないものであった。この省令案には、生活保護に関する申請権を実質的に侵害することになりそうな項目など、問題ある数多くの内容が巧妙に含められていたのである。