人口の少ない市役所の小さな世界では、正職員なら、おおよそのお互いのことは知っているという。

「そのことを話しても誰にもわかってもらえない。すごくつらかったです」

 自分の名前の存在しない職場に、居場所などなかった。

「おまえ、どうする気なんだ、将来? 仕事もしないで。おまえに家にいられると、俺は不安で…」

 Yさんが実家で引きこもっていた頃、鉢合わせした父親からよく、そう小言を言われた。

「外に出てくれれば、それでいいから」

 父親は、相当焦っていたのだろう。近隣の「地域若者サポートステーション」(サポステ)に自ら相談に行ったが、「本人を寄こしてください」と言われた。

 Yさんは、父に心配されるのが嫌で、翌日、サポステを訪ねると、話を聞いてもらうことができた。

「相手は、どこの病院に通っていて、どんな薬を飲んでいるのかまで、なるべく詳しく話して、という。こんなに話を聞いてもらえる人は初めてだと思っちゃったので、バカ正直に話してしまったんです」

 それまでYさんは、なかなか雇用がない地方の街で、「就職につなげてくれるのではないか」と漠然と考えていた。

 しかし、相談窓口の担当者は、こう言った。

「仕事は、ハローワークで探してきてよ」

 そのうち、訪ねるだけで、椅子に座る間もなく「今日は、何しに来たの?」と責められるようになった。意味がわからなかった。

 父が「どういうことなのか?」とサポステに聞きに行くと、こう告げられた。

「お嬢さん、病気なんですよ」

 父は帰るなり、Yさんに言った。

「もう、あんなところ、行かなくていい!」