昨年の2008年9月15日にリーマン・ブラザーズが破綻して1年が経ちました。

 この間に、アメリカではオバマ新大統領が誕生し、世界で合計500兆円以上の景気対策が発表され、販売台数世界第1位の自動車メーカーだったGMが破綻し、日本でも民主党政権が誕生するなど、政治・経済の各方面で大きな変化がありました。

 当連載では、リーマン・ショックから1年間経った今の視点から、リーマン・ショックとは何だったのかを、グラフで可視化した定量的なデータを基に解説していきたいと思います。当連載に掲載するグラフは、全て読者の皆様のブログやウェブサイトに無料で貼りつけることができるようになっておりますので、ご自身のブログやホームページをお持ちの方はご活用いただければと思います。各グラフ右下の「i」ボタンをクリックして、貼り付けタグを取得の上、ご利用ください。また、ここで取り扱う以外のデータ、グラフにつきましては、vizoo特集サイト「リーマンショックから1年~世界の変化を可視化する~」も合わせてご参照下さい。

 第1回の今回は、リーマン・ショックの原因となった「サブプライム・ローン」誕生から、それが大量生産されていった2000年頃からの好景気時代に焦点を当てて解説します。

借入者に「やさしい」
サブプライム・ローンの誕生

 サブプライム・ローンとは、一言でいえば「信用力の低い個人向けの住宅ローン」です。住宅ローンの実施にあたって、貸付者は債務者の信用力を数値化したスコアモデルを適用して金利や返済条件等を決定します。十分な信用力を有している債務者に対して適用されるプライム・ローンに対し、所定の基準を満たさない、つまり延滞確率が高い債務者に対する貸付がサブプライム・ローンです。

 貸付者がとる信用リスクが高くなるので、当然ながら貸付金利が高くなりますし、購入する住宅を担保にとります。担保価値が重要になりますので、住宅市況が上昇傾向なのか下落傾向かによって貸付姿勢が変わってきます。また、リスク分散を図る仕組みがあるかどうかも、貸付者にとっては重要な要素となります。元々1990年前半に誕生したサブプライム・ローンは、2000年代になってこれら構造的な問題を解決する諸条件が整ったため、急拡大を始めたのです。

 まず1つめの条件は、借入者にとっての、借り入れへのハードルの調整です。そもそも、金利が高いと返済総額が膨らむため、借入者は尻込みするのが一般的ですが、貸付者は借入者にとってのハードルを下げるため、当初数年間の返済額を極端に低く設定したり、ひどい場合は金利のみの支払とすることで、見た目の負担感を軽減したりしました。下のグラフがそのような、いわば「階段式」の返済スケジュールの一例です(あくまで1つのイメージで、実際とは異なります)。

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 最初の3年は良いものの、その後は支払い地獄が待っている、そんな子供騙しの手にのる借入者がいるのか、と思うかもしれません。ただ、貸付者が良い面のみを積極的にPRし、今までマイホームに手が届かなかった低所得者層の切実な思いを捉えたことを、外部から、あるいは過去を振り返って現在の立場では批評できないのではないでしょうか。