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佐藤一郎のパースペクティブ

技術と制度が不可分になる時代

佐藤一郎 [国立情報学研究所・教授]
【第14回】 2014年6月24日
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 現行の個人情報保護法や海外の当該法律では、個人情報の第三者提供では事前に本人同意を得ることが原則である。しかし、産業界などから同意取得の手間が、データの販売を阻害しているという強い主張があり、政府は個人情報保護法の改正では、同意なしの第三者提供の導入を検討することとなった。

 本人同意をとっていない以上は、第三者提供による本人への権利利益の侵害を防ぐ手立てが必要である。しかし、残念ながら技術だけではその手立てが難しい。

 少し背景を説明しておくと、データを加工して、個人が特定できない、つまりどこの誰に関する情報かわからないようにする、いわゆる匿名化をする技術もあるが、そのように加工されたデータは利活用に資するような情報を失っていることも多い。

 そこで技術WGは、加工の程度を弱めることで、利活用できるデータ(個人特定性低減データと呼ぶ)のまま、第三者提供を許すとした場合の加工方法やそのデータの取り扱いを議論した。

 ただし、加工の程度が弱いということは、その情報から個人の権利利益の侵害につながる可能性が残っていることにもなる。そこで受領側(買い手)に、データから個人を特定しない、つまり、どこの誰かを調べることを禁止するという規律を含む制度を提案することになった。これは技術の問題を制度で解決したことになる。

 なお、こうした方法は世界的にも例がない。その意味では先駆的な制度を導入することになるが、どんな問題が起きるかも未知数である。問題を最小化する観点からいうと、厳格な規律とセットでないと機能しないだろう。

Google Glassに十分な制度設計はなされているか

 Googleが発売したウェアラブルディスプレー/カメラのGoogle Glassによるプライバシー侵害が危惧されている。ビデオカメラやデジタルカメラ、スマートフォンなどでの撮影の場合、カメラを構えるなどの撮影者の動作から、他者は撮影中か否かが外見的にわかるし、それがわかれば撮影範囲を避けたり、拒否する意思を伝えることもできる。

 しかし、ウェアラブルカメラの場合は、カメラを構えるわけではないので、撮影中か否かを他者が知ることは難しい。Google Glassを使った方は御存知だと思うが、撮影中を示すランプなどはない。だから、知らないうちに撮影されていてもわからない。

 Google Glassをつけて映画を見れば著作権付きコンテンツを撮影してしまう。また、Google Glassを装着して、知人といればその知人のプライバシーに関わる行動を撮影・記録してしまうことがあるし、装着・撮影しながら街中を歩けば不特定の人を撮影できるし、その画像を何らかの顔識別技術と組み合わせば、すれ違った人が誰なのかがわかる可能性がある。

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佐藤一郎
[国立情報学研究所・教授]

国立情報学研究所アーキテクチャ科学系教授。1991年慶応義塾大学理工学部電気工学科卒業。1996年同大学大学院理工学研究科計算機科学専攻後期博士課程修了。博士(工学)。1996年お茶の水女子大学理学部情報学科助手、1998年同大助教授、2001年国立情報学研究所助教授、を経て、2006年から現職。また、総合研究大学院大学複合科学研究科情報学専攻教授を兼任。
専門は分散システム、プログラミング言語、ネットワーク。

佐藤一郎のパースペクティブ

分散システムの研究を核としつつ、ユビキタス、ID、クラウド、ビッグデータといった進行形のテーマに対しても、国内外で精力的に発言を行っている気鋭のコンピュータ・サイエンス研究者が、社会、経済、テクノロジーの気になる動向について、日々の思索を綴る。

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