「『あまりにも少なすぎ、あまりにも遅すぎた』というのは、中央銀行だけでなく、あらゆる活動についての用語集の中で最も悲しい成句の1つである」。C・P・キンドルバーガーは名著『金融恐慌は再来するか』(原書初版は1978年)の中でそう述べている。
ブームの後の金融市場の混乱のなかで、中央銀行などが「最後の貸し手」として市場に適切に流動性を供給することは非常に重要である。
しかし、金融機関を救済するタイミングには難しさもある。「ある程度の不確実性は市場の自立性を形成する上で有用である」。モラルハザードを避けるには、「曖昧さ」があるほうがよいという。
ただし、「『泳ぎの達者な人を溺れ死にさせるまで泳がせる』ようであってはならない」とキンドルバーガーは主張している。「支払い能力のある企業まで流動性不足に陥るほどに危機を拡大するのを待っていてはならない」。
結局、最後の貸し手の信用供与のタイミングは、「1つの技術であるというよりほかはない」という。
日銀は12月2日に臨時金融政策決定会合を開いて、企業金融支援対策を発表した。銀行間だけでなく、企業の年末越えの資金繰りにおいても逼迫感が高まってきたためである。