あまり昔の学生と比較するのは好きではありませんが、卒業後にIT企業で幹部になったり、NPO法人を立ち上げたりしたOB・OGたちの在学中は、なぜ学びたいのか、何を学びたいのかという問題意識が、粗削りでしたが、訥々とした語りのなかに伝わってきました。この原石を磨いてあげようと思わせてくれました。

 学生ですから、洗練されたプレゼンができないことの方が多い。それは当たり前。ただ私が言いたいのは、うまい説明ではなく、動機や思いを語ってほしいということです。そうすると、学びを人生にどう生かしていきたいのかもみえてきます。

 以下に、例を挙げましょう。

「地方にある実家は店をやっているが、そこの商店街はすっかりさびれてしまった。父も母も苦労しているが一店舗や商店街だけの努力だけでは何ともしがたい。だから地域経済を再生させるにはどうすればいいのか、ここで学びたい」

 この物語は一気通貫していて、実に説得力がありました。何よりも伝えようとするストーリーの「序破急」「起承転結」がはっきりしている。仮に私が目を瞑っていたとしても、その内容や情景が目に浮かびます。学生が子どものころから家業をどう見てきたのか。お父さん、お母さんが陰で苦労する姿をどう思ってみていたのか、伝わってきます。

電話が大の苦手な「LINE世代」

 慶応大学の入試では小論文を課しています。私大文系型入試の問題点を取り上げた以前のコラム(参照;第2回第3回)で触れたように、数学や小論文の無い他の私大文系学生に比べれば、論理的思考能力や知識を運用して文章に落とし込む力は平均的に高いはずです。要領よくまとめる「編集力」もあるはずです。

 高飛車に思われることを怖れずに言えば、そんな「優秀」なはずの慶応の学生ですらも、論文を書かせればできている起承転結などの文章構成や表現の推敲が、プレゼンになると、おぼつかなくなる要因には何があるでしょうか?

 13年前にSFCにいた頃と、現在の学生を取り巻く環境を比べて考えるうちに気づいたことがあります。それは情報環境の一大変化がもたらした影響、特にtwitter、FacebookなどのSNSや、スマートフォンの普及で学生間のコミュニケーション形態が大きく変わってしまったことです。そして、何と言ってもLINEの普及が大きな影響を与えていると感じます。

 ご存じのように、LINEは、Facebookやtwitterと異なり、電話番号を互いに知っている者同士の、内に閉じたコミュニケーションが特徴です。無料通話のアプリとして注目された当初の機能よりも、若者たちが頻繁に利用しているのがチャットです。「1対1」は勿論、学生たちが好んで使うのが「1対n」「n対n」のグループチャットです。