規制委に対して
渦巻く疑心暗鬼

 政府が積極的に発せず、マスコミが全く報じていないことがある。核燃料サイクル事業の主体である日本原燃・六ヶ所再処理工場(青森県六ヶ所村)は、昨年5月にすべての工程が問題なく運転できることが確認済みなのだ。これは、実は周知の事実である。

 本来ならば、昨年10月に竣工し、使用済燃料の再処理事業は既に始まっているはずだった。しかし、原子力規制委員会が発足したことで、新規制基準の適合性審査に合格しなければ再処理事業の開始が容認されなくなったのだ。

 2014年6月10日現在、12原発19基や六ヶ所再処理工場・核燃料加工施設などが、新規制基準への適合性審査を原子力規制委員会に申請中である。原子力規制委員会は同年3月、後続の審査の模範となるよう優先的に九州電力川内原発1・2号機の審査書案を作成することを決定した。この適合性審査に関しては、規制当局である原子力規制委員会・原子力規制庁が申請書類の修正を必要以上に求めることが多く、実証主義は影を潜め、書類主義が横行している場合が非常に多いようだ。

 審査申請の数に対して、マンパワーが全然足りていない規制当局。職員の労力が重箱の隅を突くような書類の扱いなどにばかり費やされており、規制の適格な運用や効率的な審査といった肝心要の業務に力と時間が割かれていないのではないか。そうした疑心暗鬼が蔓延している。

 昨年語られた「審査(終了まで)に半年程度」(田中俊一・原子力規制委員会委員長)の言葉が虚しい響きに終わっているのは、そうした実態からであろう。この点に関しては、審査される原子力事業者側に問題があるのではなく、審査する規制当局側に大きな問題があると言わざるを得ない。

“発電=危険”
“停止=安全”ではない

 日本のすべての原子力発電所は、技術的な観点ではなく、前民主党政権による政治的な観点で停止させられたまま再稼働させられずにいる。現自民党政権は、そうした法に基づかない前政権の悪しき政策運営を引き継いでしまっている。いわば“政治的塩漬け”状態が続いているのだ。法的には、原子力規制委員会に原発稼働の可否を決める権限はない。

 だが、2014年4月11日に閣議決定されたエネルギー基本計画では、「いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める」とされている。