配偶者控除の見直しが進めば、それぞれの企業が支払う家族手当や配偶者手当などの支給条件も変更される可能性が指摘されている。なぜなら、多くの企業で配偶者の年収が103万円以下、つまり配偶者控除の適用を受けていることを支給条件にしているケースが多いからだ。こうした手当の支給条件が切り下がれば、労働者にとっては労働条件の変更となる。そこで、配偶者控除の見直しについて、日本労働組合総連合会(連合)に見解を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)

配偶者控除は
扶養控除へ統合すべき

――政府が検討を進める配偶者控除の見直しについて、連合のスタンスを教えてください。

かわしま・ちひろ
1963年生まれ。1987年に新日本製鐵(株)入社。1992年より新日本製鉄本社労働組合の専従役員、2003年より連合総研へ派遣、2008年より連合へ派遣、2011年より現職。金融審議会委員、官民競争入札等監理委員会委員などを務める。

 連合では以前から、性やライフスタイルに中立な税と社会保障の確立を訴えています。現在の配偶者控除は扶養控除に整理統合する、さらに所得控除から税額控除に変えることを提言しています。政府の狙いである女性の活躍促進の観点からは、配偶者控除見直しでは効果が限定的でしょう。

 見直しによって「103万円の壁」がなくなり、この壁を意識して就労調整していた人たちが働くという想定ですが、年間の所得額が1000万円以下の人が対象の配偶者特別控除がありますし、そもそも世帯の手取り収入が減るということは起きないので、103万円の壁をなくすように制度改定しても効果はそれほど見込めないということです。

 ちなみに、連合の主張である扶養控除に一本化したとき、手取りの逆転が起きないように、消失型扶養控除にすべきだと主張しています。

――「103万円の壁」については、手取りが減ってしまうと誤解している人はけっこう多いように思います。そうすると、配偶者控除見直しについては、見直すということについては賛成ということでしょうか。

 中身次第ですね。廃止したり、二重の控除をとったりすると、それは単なる増税です。増税になるなら、どういった所得層が増税の対象になり、どのような影響を及ぼすのか、増税によって得られた税収は何に使うのか、こういったことを丁寧に議論し、政府は説明責任を果たす必要があります。

 先ほど言ったように、女性の活躍推進ということについては、効果があるのか疑問です。こういう疑問があるなかで、見直しを進めるのは乱暴です。