ここ最近、家族の力が弱くなってきていることにより、引きこもり当事者が福祉制度を利用せざるを得ないケースが増えてきている。
医療機関に外来で訪れる当事者たちの中には、明確な疾患があるわけでもないにも関わらず、なかなか通学や就労できるようにならない、といったケースが少なくない。
そこで、家族に「こんなところがありますよ」と相談先などをいくら紹介してみても、家族のほうに力がなくて動けなくなっているという。
先日、東京都の町田市役所で開かれた「ひきこもり事例検討会」に出席したとき、そんな報告が、地域で開業するクリニックの医師から投げかけられた。
親の会立ち上げ、引きこもり問題の認知
精力的に活動してきた団塊世代の親
これまで多数を占めていた「団塊の世代」の親であれば、かつて学生運動を起こしてきたときのように、子どもの社会復帰に対する思いからエネルギーがあふれるくらいの行動力があり、社会へ向けた情報発信力もある程度は健在だった。
ところが、親の年代が代わり、さらに家庭の生活困窮化が進んでいく中で、家族の力が弱くなり、今後ますます社会の力が必要になってきているというのである。
たしかに、これまでの親の世代は、引きこもり状況に陥った自分の子どもの将来に危機を感じ、支援機関などの情報を収集したり、親の会を立ち上げて交流したり、自ら支援活動を通して世の中に訴えたりして、引きこもりという問題の存在を国に認知させてきた。逆に言うと、親のエネルギーがあまりに強すぎるあまり、その子どもたちが動けなくなっているのではないかと感じられる面もあったほどだ。
その一方で、十分な額とはいえないまでも、それなりの退職金や年金収入などによって、何とか家庭を維持し続けることもできていた。
ところが、親の世代交代が進んで、家庭の環境も少しずつ変わりつつあるようだ。