ブラックボックスでは誰が発射した
ミサイルかは判別できない

 地対空ミサイルが発射される前に、上空を飛行中のマレーシア航空17便から、軍用機ではなく民間機であると、何らかの形で合図を送ることはできなかったのだろうか。小林氏はこのような状況下で民間機が地上の軍兵士や民兵にシグナルを出すことはできないと語る。

「民間の旅客機が地上にいる軍や武装勢力に対して、民間機であるというシグナルを出して、地対空ミサイルの発射をストップさせることは不可能だ。レーダーに映った機体が民間機であるかどうかは、空港の管制塔とのやり取り等で行われるのだが、移動式の地対空ミサイルのオペレーターと管制塔のスタッフのやり取りが無いかぎり、民間機と軍用機の違いを現場で瞬時に判断するのは非常に困難だ」

 マレーシア航空機の墜落が世界中に速報として伝えられてから間もなくして、親ロシア派武装集団が墜落現場周辺に展開。ウクライナ国内であるにもかかわらず、犠牲者の遺体や残骸などの回収作業をウクライナ側が行えないという事態が発生した。

 その中で注目を集めたのが、現場で親ロシア派武装集団が回収したブラックボックスの存在だった。

 マレーシア政府は親ロシア派勢力と水面下で交渉。「ドネツク人民共和国」の首相を名乗る親ロシア派武装集団の幹部アレクサンドル・ボロダイ氏は22日、ウクライナ東部のドネツクでマレーシアから派遣された専門家にブラックボックスを手渡した。

 しかし、ブラックボックスに記録された情報では、誰がミサイルを発射したのかを特定するのは難しい。小林氏は次のように語る。

「親ロシア派武装勢力が回収したブラックボックスをマレーシア政府に渡すまでに何日もかかったが、フライトデータレコーダーとボイスレコーダーの記録では、仮にそれらの保存状態が良かったとしても、誰が実際にミサイルを発射したかまでは特定できない」

「むしろ墜落現場に残された機体の残骸やミサイルの破片などから、ミサイル発射に関する特定作業が進められていくわけだが、墜落現場周辺をコントロールしていた親ロシア派武装勢力がすでに隠ぺい工作を行った可能性も否定できない。21日にアメリカのオバマ大統領は調査活動を妨害しているとして、親ロシア派武装勢力を非難したが、彼らが証拠となる残骸などをすでに現場から持ち去った可能性もある」

「誰がミサイルを発射したのかという問題で決定的な証拠になるのは、ブラックボックスではなく機体やミサイルの残骸だ。親ロシア派武装勢力がブラックボックスを手放したのも、ブラックボックスだけでは誰がミサイルを発射したのかを特定できないという考えが存在したからではないだろうか」