

それでは、現在そして今後、どのようなデジタルイノベーションが注目されるのであろうか。一時代前は、軍事・産業・学術分野で開発された高度な科学技術やその応用技術が、一般企業のビジネス分野へ、そして消費者へと転用されていった。
しかし現在は、こうした流れに逆流現象が生じており、コンシューマー技術が企業や軍事分野への転用されるようになっている。昨今では、スマートモバイルデバイス、パブリッククラウド、ソーシャルテクノロジなどコンシューマーITの世界で発生し普及した技術を、どのように企業ITに取り込んでいくかが重要な議論となっており、この傾向は今後さらに加速すると予想される。
このようなコンシューマー技術の普及や、IoT(Internet of Things)の台頭が、企業におけるデジタルイノベーションを後押ししている。現時点において注目すべきデジタルイノベーションの潮流としては、「社会・産業のデジタル化」「顧客との関係のデジタル化」「組織運営・働き方のデジタル化」の3つの方向性が考えられる【図2】。
社会・産業のデジタル化の領域では、3Dプリンティングでモノづくりが変わる、小型無人飛行機とGPS(全地球測位網)で小荷物配送が変わるといったことが現実化しつつある。また、顧客との関係のデジタル化においては、店舗のショールーム化(ショールーミング現象)を引き起こしたり、ソーシャルネットワークによって消費者が繋がりあったりすることで購買行動に変化が生じつつある。
組織運営・働き方の分野では、雇用・就労形態の多様化の動きを止めることはできず、組織のトライブ化、人材のグローバル化、従業員のモビリティはさらに加速し、「雇用」「就労」の概念さえも大きく変わっていくことが予想される。これは、評価や報酬のあり方、合意形成や意思決定のプロセスにも影響を及ぼすこととなろう。