州が実質的に関税を肩代わり

 反ダンピング税の締め付けから脱却するため、反ダンピング税を納めるよう判決が出たその年に、李氏はアメリカでの工場建設を決めた。アメリカの5つの州が候補に挙がり、62の都市に現地での工場建設に関する問題に回答してもらうようプロジェクト招請書を出した。ほどなくして大多数の都市からの回答を得た。ある都市からの回答書は600ページ以上にも及んだ。その後、2~3ヵ月の分析を経て3つの都市に絞り、最終的にアーカンソー州とアラバマ州の2つの対決となった。

 数百万ドルの補助や各種税金の返還など、当初はアーカンソー州が提示した優遇政策のほうがアラバマ州よりもずっと好条件であったという。だが、アラバマ州で通過した「アラバマ関税信用法案」によって金龍は考えを変えた。

 同法案では、外資企業がアラバマ州への直接投資額1億ドル以上、100名分以上の雇用創出などの条件を満たせば、アメリカ税関で納める反ダンピング関税の関連文書に基づき、州政府に同額の企業税減免を申請できると規定している。つまりは、州政府が企業の支払うべき反ダンピング税を肩代わりするということである。

 だが、すべてが順風満帆という訳ではない。この法案が現地の労働組合に反対された。だが、外資を引き入れ雇用を増やしたいと願うアラバマ州政府は、関税の助成金を工場建設の進行具合に基づいた最大2000万ドルの現金補助に改め、税金や土地コストの免除、従業員研修手当などにおいても、金龍をアラバマ州に引き留めるための手をいろいろと打った。

 例えば、従業員研修では、州政府が300万ドルを出資し、金龍は中国での研修課程をアメリカの現地スタッフが理解できる英語へと切り替え、映像教材用に新郷市で生産現場の撮影を行った。金龍の工場が建つ2000アールの土地もまた、現地政府が無償で提供したものである。また、工場所在地を鉄道が横切っているので、現地政府は従業員の通行のために歩道橋まで建設した。