ここからは私自身の“中国側が考えていること”に対する主観的考察である。

(1)中国側は対日関係を重視しており、対話の窓を拡大させたいと思っている。

(2)日本側との対話の継続と打開という観点から、ミャンマーにおけるARFという第三の場を使って外相間の面会の機会を持った。

(3)一方、日本側に対して過度の期待を持たせることは、誤ったシグナルを与えるだけでなく(日本側でのメディア報道はタイムラグなしに中国世論に漏れてしまう)、世論をミスリーディングしてしまうことにつながり、結果的に対日外交を硬直化させてしまう(2008年に合意したものの現在まで進展のない東シナ海ガス田協力が典型的なケース)。

(4)また、日本側に対して安易な歩み寄りの姿勢を示すことは、大衆世論や党内強硬派から“弱腰”と認定されるだけでなく(私が知るかぎり、外相が日本畑を歩いてきた王毅であれば尚更“弱腰”と見なされやすくなるという懸念を、王毅外相自身も、習近平国家主席も強く抱いている)、仮に歩み寄ったにもかかわらず、日本側に“裏切られ”、国益を害したと見なされれば、共産党の政権基盤そのものが揺らいでしまう。

(5)よって、中国側は一寸の隙も見せないように、慎重に慎重を重ねて対日関係の継続と打開に挑んでいる。ミャンマーでの“非公式接触”がその慎重姿勢を象徴している。

 加えて、習近平国家主席は前任者たちが遺した“教訓”を継承している。

 2010年5月、温家宝前首相が訪日し、“日中首脳会談”を持った直後に、日本側の鳩山由紀夫元首相が辞任した。2012年9月、ウラジオストックでAPEC会議が開かれた際に、日本の野田佳彦元首相と中国の胡錦濤前国家主席が面会したが、その直後に民主党政権下の日本政府は尖閣諸島の“国有化”を閣議決定している。

 私が知るかぎり、それぞれ(特に後者に関しては)複雑極まりないマターであり、事態が発生した原因や背景を一筋に語ることはできないが、ここで一つだけ言えることは、胡錦濤前主席から国家指導者の襷を受け継いだ習近平現主席が「日本の内閣総理大臣との安易な接触は避けるべきだ。さもないと、巨大な政治リスクを抱え込んでしまう」という認識を強く持っているということである。