2014年9月4日、「貧困ジャーナリズム大賞2014」の授賞式が行われた。筆者自身も本連載「生活保護のリアル」をはじめとする報道によって大賞を受賞した。
今回は、この賞と受賞者らによるシンポジウムについて紹介する。見出しにくく、聞き取りにくく、伝えにくく、伝わりにくい「貧困」を伝えるために、広い意味での「ジャーナリスト」たちは、どのように日々の取り組みを続けているのであろうか?
本連載「生活保護のリアル」で
「貧困ジャーナリズム大賞2014」を受賞
写真提供:反貧困ネットワーク
去る2014年9月4日、筆者は本連載に代表される一連の生活保護報道に関し、「貧困ジャーナリズム大賞2014」の大賞を受賞した。その数日前、受賞の連絡を受けた筆者は、嬉しいというよりも驚いたというのが正直なところだ。しかし2週間が経過した現在、落ち着きを取り戻すとともに、喜びと責任感をしみじみと噛み締めている。
2011年、科学・技術分野以外での実績が皆無に近かった筆者に、生活保護問題に関する記事を世に問う機会を与えていただいた「ダイヤモンド・オンライン」編集部の皆様(連載開始は2012年)、さらに毎回の記事にご関心と賛否ともの感想をくださる読者の皆様、取材に応じていただいた多数の方々に対して、この場を借りて、心より感謝を申し上げたい。
この賞は、貧困問題に取り組む団体「反貧困ネットワーク」が2007年に創設したもので、貧困問題を報道する数多くのメディア関係者らが受賞してきた。本連載で紹介した白井康彦氏(中日新聞編集委員)も2007年と2013年の2回にわたり、多重債務問題と生活扶助引き下げに関して受賞している。なお、反貧困ネットワークには「共産党系」という見方もあるが、関わる人々を何人も直接知る筆者が共産党カラーを感じたことは一度もない。
活動の趣旨は、『ひろがる「貧困」を最大の社会問題として位置づけ、それを解消するために活動する人間同士のネットワーク』である。「貧困」を解決すべき問題と捉えるかどうかよりも、政治的な「右」「左」を重要と考える方々は、ぜひ、どのような人々が過去に受賞したかを見てみていただきたい(http://antipoverty-network.org/award 下部に過去のリンクあり)。「週刊ダイヤモンド」「週刊文春」などビジネス誌・一般週刊誌が含まれているだけではなく、「右」と考えられがちな産経新聞社の記者たちも受賞している。
「貧困ジャーナリズム大賞」は、貧困に関するジャーナリズムの関心が必ずしも高いとはいえない日本において、
「ともすれば一面的、感情的、あるいは官庁発表垂れ流しの報道が繰り返され、貧困の実態に関する国民の無関心や無理解、誤解・偏見等を招いてきました。(略)欧州の国々では、貧困をめぐる報道は日常的に多様な形で行われています」
という状況をただす目的で設立されている。賞の対象は「貧困問題への理解と意識を持ち、正確にかつ継続的に報道するなど、顕著な報道活動を行ったジャーナリスト個人」となっているが、ここでいう「ジャーナリスト」の範囲は非常に広く、俳優やフィクションの作り手も含まれている(以上、引用は http://antipoverty-network.org/awardより)。