世の中はゴールデンウイーク。住まいで時間に余裕のある休日を過ごし、通常より「健康で文化的な生活」を送ることのできる方々も多いことだろう。非正規雇用の人々・自営業者にとっては、長期連休は収入減を意味することも多いけれども。

ここ数ヵ月、貧困問題や生活保護そのものを題材とした作品やTV番組が急増している。そこで今回はゴールデンウイークにあたって、それらの内容や見どころを紹介したい。

現実を知る手がかりとするためには、作品のどこにどのような視線を向ければよいのだろうか?

ヒロインは新人ケースワーカー
柏木ハルコ「健康で文化的な最低限度の生活」

 現在、週刊青年コミック誌「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)に、生活保護制度をテーマとした作品が連載されているのをご存知だろうか? 柏木ハルコ「健康で文化的な最低限度の生活」だ。

 主人公・義経えみるは、大学を卒業して東京都・東区役所に就職したばかりの新人公務員。就職早々、福祉事務所に配属され、ケースワーカー業務を担当することになった若い女性だ。この作品の中では、えみるの戸惑いや奮闘ぶりが、福祉事務所の日常や生活保護を利用する当事者たちの姿とともに描かれている。現在は、誌上で第5話までが公開されている。

 第5話は、稼働年齢の生活保護当事者に対する就労指導が中心だ。えみるは、担当している中年男性・阿久沢さんに対して就労指導を行っている。医師は「身体状態に問題なし」と判断したはずなのに、福祉事務所を訪れた阿久沢さんは激しい咳をしている。歩く後ろ姿もフラフラだ。真面目で実直そうな人物として描かれている阿久沢さんは、ハローワークで求職活動に取り組んでいるけれども、就労という成果には結びついていない。食事は、1日1食だけだという。なぜ1日1食しか食事ができないのか? ギャンブルや酒にお金を使っているのだろうか? そもそも、阿久沢さんの体調不良は本当なのか? 働きたくないので仮病を使っている可能性はないか?

 福祉事務所の先輩たちのアドバイスにより、えみるは家庭訪問を行ってみた。あまりにも質素で閑散とした室内。ほとんど何も入っていない冷蔵庫。その冷蔵庫のドアには、借金の返済を求める書類がマグネットで止められている。生活扶助費で借金を返済……? 最後のページの次回予告によれば、次回、阿久沢さんのさらなる秘密が明らかになるようだ。

「健康で文化的な最低限度の生活」は、ヒロインが新人ケースワーカーであることと舞台が福祉事務所であることを除けば、基本的には青春ストーリーだ。しかし筆者は、描写の細部に充分なリアリティを感じており、今後の展開を楽しみにしている。また本作品に対しては、筆者の周辺の生活保護経験者・貧困問題に関わる支援者たち・福祉事務所での勤務を経験したことのある公務員たちも、概ね「正確に描かれている好作品」と評価している。