キッチンは2つ必要?アルコール消毒もダメ?
「安全」のみならず「安心」をどう担保するか

 ちなみに屠殺はイスラム教を信仰する人間が行う必要があるが、それ以外のこと、すなわちハラールフードを製造したり料理をしたりということについては、ルールを守っていれば信者でなくても問題はない。

 しかし、飲食店での実際的な対応については「理想はキッチンを2つ持ち、ひとつをハラール専用にすること」だと、エリアス氏からの説明があり、来場した人からは「現実的に(ホテルなどを除き)キッチンを2つ持つことは不可能、1つでも対応できるか」という質問が飛んだ。

 答えは、

「ハラール用などをきちんと区別して、保管するなどすればひとつのキッチンでもハラール対応は可能だ」

 というものだったが、個人的には現実には難しい、と思わざるを得なかった。飲食は結局のところ信頼の問題だ。自分がムスリムだったらいくら「ちゃんと区別して、あなたに提供する皿は儀礼的洗浄をしていますよ」と言われていても、隣のテーブルの人がビールを飲み、豚肉を食べていたら、とてもじゃないが食べる気分にはならない。

 『安心』と『安全』は違う。喩えが適切ではないかもしれないが、検尿に使ったカップを完全に洗浄すれば安全だが、それでビールは楽しく飲めない。イスラム圏の方に安心して、気持ちよく食事をしてもらうのはなかなか難しそうだ。

 またハラール対応することと、認証を受けることはまた別だ。認証はビジネスの側面があり、ややこしいのは認証団体が数多く存在していることだ。マレーシアは国がハラール認証によるビジネスを推し進めており「マレーシアのハラール認証は厳しいが、それを受ければ世界中どこに行っても大丈夫」(服部学園理事長・服部幸應氏)とのことでが、困惑することも多い。世界で統一された基準というものがないからだ。

 一例を挙げればアルコール除菌である。飲食店のキッチンではアルコールによる洗浄が一般的に行われているが、イスラム教ではアルコールは厳禁。例えば「クジラ肉、イスラム教徒にも…捕鯨船が認証取得 」という読売新聞の記事には、

 『手の消毒で使っていたアルコールがイスラム法上認められないと指摘を受け、次亜塩素酸ナトリウムに変更し、同24日に認証された』

 とあるが財団法人 食品産業センターが出している『マレーシアハラル制度の実務』によると、

「消毒に工業用エタノールを使用することは認められる」

 とある。今回、講義を受け持ったHDCは基本的にはOKという考え方のようだが、認めないという考えもある。工場などは駄目でも飲食店は大丈夫、など認証機関によって異なるようだ。