筆者はコンスタントに中国内陸の農村部に足を運んでいる。農村部の変化をチェックするというもっともな理由はあるが、正直に言えばたまには違う風景を見たいという息抜き的な理由もある。中には、さほど不便でないことから、定点観測といえるほど通う村もある。日本ではあまり紹介されていない中国農村部を、IT市場とその将来という観点から見ていこう。
最近農村部に行くたびにまず感じるのは、素朴な街の光景が、新たに建築されている高層マンションに押されてなくなっていることだ。地元の不動産販売情報を見るに、1m2あたりの価格で感じ取る不動産価格はかなり高騰している。一方で、そこで生活する人や売られているモノには、そう大きな変化はない。昔から変わらぬ個人商店と、地場に根付いた冴えないスーパーと、ノーブランドのケータイショップと、それに地場のB級グルメ屋台が並び、それぞれにまばらに客が入っている。
都市部では若い世代を中心に、すっかり天猫(Tmall)や淘宝網(Taobao)らのネット通販での消費依存が目立つようになった。アパレルショップや外食系やスーパーはまだリアルショップも元気だが、家電量販店やパソコンショップの客入りは特に悪く、アップルやサムスンなどのスマートフォンを扱うショップにも、かつての賑わいはなくなった。都市部の消費の変化やトレンドの変化は激しいが、対して農村部の消費の変化は少なく、建物の変化を除けば時の進み方が遅く感じる。
農村部でのインターネットの利用実態は、都市部のそれと大きく異なる。CNNIC(中国インターネット情報センター)によれば、インターネット利用率は、都市部が62.0%であるのに対し、農村部は28.6%まで下がっている。また利用形態も、都市部では自宅でのADSL+外出先のスマートフォンであるのに対し、農村部ではスマートフォンないしフィーチャーフォンのみだ。農村部でもキャリアショップがあるため、iPhoneを筆頭にスマートフォンも売られているが、低価格で低性能なメーカー名なきスマートフォンも根強い人気だ。