頻発する中南米やアフリカでの流行
近代でも数万人が死亡するケースも

 WHOのホームページでは、アウトブレイク情報が逐次掲載されている。今年になってからのアウトブレイク情報を見るだけでも、エボラウイルスやコロナウイルス、鳥インフルエンザウイルスのような有効なワクチンがない感染症と並び、ポリオ(急性灰白髄炎)やコレラ、黄熱といったワクチンで予防できる感染症のアウトブレイク情報が発出されている。

 黄熱は今年4月にコンゴで、コレラは続く5月に南スーダンで、それぞれアウトブレイクしている。ポリオは、元々流行していたシリアなど中東地域から他の中東地域各国に今年感染が拡大した。昨年10月にカメルーンで発生したアウトブレイクに由来するポリオウイルスは、今年4月に大西洋を渡って赤道ギニアに伝播したことが確認されている。

 今年1月以降だけでも多くのアウトブレイク情報が確認されているように、世界各国で流行が拡大している感染症は数多い。上記の通り、現在も南スーダンでアウトブレイクしているコレラは、2011年には60万例近く、2012年にも24万例以上の感染例が報告された。

 こうした数字はあくまでも報告ベースのことだ。WHOの感染症データベースによれば、流行地域がアフリカや中南米であることから、医療インフラが不十分なため適切に診断されず、報告数が実数を下回っている可能性を考慮すると、コレラ感染者の実数は報告数よりもかなり大きいと考えられている。

 発症後急激に病状が進展し、早期に適切に治療されないと致死的で、一命をとりとめても手足の切断や神経学的後遺症を残す可能性がある侵襲性髄膜炎菌感染症もまた、セネガルからエチオピアに至る「アフリカ髄膜炎ベルト地帯」と言われる地域で定期的に流行が繰り返されている。髄膜炎菌は飛沫感染により伝播し、2009年の流行では、ナイジェリアでの5.5万例を含む8万例近くの感染が報告され、うち4288名が死亡している。1990年代には20万例以上に及ぶ大流行があり、約3万人が死亡した。この時の大流行を受けて、国際的な取組として、この髄膜炎ベルト地帯の国々には、医療支援の一環として国際機関から髄膜炎ワクチンが提供されている。

 日本国内では、戦後の衛生状況の改善やワクチン接種の浸透により、重大な感染症リスクは遠のいた、と一般的に思われている。狂犬病の国内感染例は半世紀以上にわたり発生していない。ポリオも、生ポリオワクチン由来の発症事例を除き、1980年を最後に報告は見られない。