日本人3人がノーベル物理学賞を受賞しました。本当に喜ばしいことです。ただ、これまでの訴訟などの経緯を考えるとやむを得ないのですが、マスメディアの注目が中村氏の言動にばかり集まるのはどうなのだろうかと思います。個人的には、今回の受賞は2つの大事なインプリケーションを示しているのではないかと思います。
名大関係者のノーベル賞受賞は6人に
なぜ名大は官民イノベーションプログラム対象外?
一つは、受賞者のうちの2人、赤崎氏と天野氏は名古屋大学という中京エリアの大学で研究を行ってきたということです。中京エリアは日本の製造業の中核とも言える地域であり、そこに研究の拠点を置く2人が受賞したということは、中京エリアはものづくりという産業レベルの力のみならず自然科学の研究のポテンシャルも高いということを証明していると思います。実際、名古屋大学関係者のノーベル賞受賞者数はこれで6人となり、東大と京大のそれぞれ8人に次ぐ数となっています。
かつ、青色LEDは基礎研究というよりも実用段階の研究であることを考えると、日本のものづくりの中核エリアは実用段階の研究にも秀でているのだろうと言うことができます。
そう考えると改めて不思議になるのは、私がこのコーナーで度々問題視している文科省の官民イノベーションプログラム(国費で大学発ベンチャーに投資するファンドを大学ごとに設立)の対象がなぜ東大、京大、阪大、東北大の4大学だけなのかということです。
大学発ベンチャーというのは、実用化段階の研究の成果をベースにした起業であることを考えると、まさにその実用化段階の研究でノーベル賞受賞者を2人も輩出した、日本のものづくりの中核エリアの拠点大学がその対象に含まれていないというのは、改めてこのプログラムの欠陥を感じざるを得ません。