安倍政権はこの秋の臨時国会で、「女性が輝く社会」を実現させるための「女性の活躍推進法」成立をめざしている。「ガール・パワー」などという女性支援団体を立ち上げた僕からすれば、これは大いに賛同できる動きだが、しかし、残念ながらこの法案が成立したからといって、それだけで女性が輝く社会になるかと言うと、そうはならない。

 確かに、この法案成立は働く女性のためになることは確かだ。同法案の焦点は、簡単に言えば、働く女性が妊娠、出産という女性特有の理由、そして育児という現実的に女性の役割が大きいライフイベントに際して、それを理由に解雇されないこと、また出産・育児休暇後もスムーズに職場復帰できることをめざすものだ。これは働く女性にとって大きなメリットになると同時に、日本企業の文化を変える大きな要因になる。

いまだ感じる、採用時の男女格差

 いまの日本企業の大きな問題のひとつは、女性が活用できていないことにある。これはなにも「男女平等」という理念の話ではなく現実的な人材戦略の話だ。つまり、妊娠や出産という理由で、日本企業は優秀な人材を切り捨てたり、うまく活用できていない。むしろ、そうした人材を無駄にする企業や社会に成長性はないわけで、これが日本経済停滞の要因でもある。

 僕はマーケティングコンサルタントとして長年、あらゆる業種の大企業と仕事してきたが、優秀な若者や女性を活用しようとする気概、意欲に関しては、日本企業が最強と言われた80年代に比べて、いまは明らかに落ちていると感じる。

 しかし、就活生に関して言えば、相対的に男子より女子の方が優秀だ。これは多くの企業の人事担当者も認めている。「男子に下駄を履かせなければ、採用するのは女子ばかりになる」という声が多くの企業人から聞こえてくる。僕のもとにも、これまで東大大学院、慶應大学院、一橋、早稲田、マーチ校などさまざまな大学、大学院の学生がインターンとして来てくれているが、女子の感性と能力は非常に優れていて、僕も大いに役立っている。

 そのような優秀な女子学生は、最終的にはいわゆる一流企業に就職できているが、けっして楽勝というワケではなく、いくつもの大企業の就職面接で落とされている。ある女子インターン生も、希望企業の一つの最終面接まで進んだがそこで落とされてしまった。その企業の役員と僕は親しかったし、彼もその女子大生のことを知っていたので、落とされたことを報告すると、「なんで人事は、あんな子を落とすのかなあ」と憤慨していた。