シティ銀事業買収の2次入札に残った銀行の中でも、前向きといわれる新生銀行なのだが、悩みを抱えている
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 交渉が続くシティバンク銀行の売却案件。買い手候補の中には、業界の悩みの種である、“魔物”を前に足がすくんでいる銀行もいる。

 10月14日、米金融大手シティグループは、日本を含む世界11市場で個人向け事業から撤退すると発表した。邦銀との間で進むシティ銀の個人向け事業と、クレジットカード事業の売却交渉も、その世界的なリストラ策の一環だったというわけだ。

 このシティ銀の事業売却交渉は9月に1次入札が行われ、売却先候補が4行程度に絞られた。シティ銀は10月末から11月にかけて2次入札を実施し、年内には売却先を決定したい考えだ。

 買収に名乗りを上げた邦銀はどこも慎重な姿勢で、1次入札を経て数が絞り込まれた今もそれは変わらない。「シティ」のブランドとサービスが剥げ落ちれば、顧客が流出してしまう可能性大だからだ。加えて、銀行の個人向け事業は実質的に赤字事業のため、「値付けが極めて難しい」(買い手候補の銀行幹部)事情も重なる。

 さらに、ここにきて2次入札に進んだ銀行の中で、別のリスクに対する懸念をささやく声が上がる。それがシステムリスクだ。

銀行業界は装置産業

 システムリスクが顕在化した代表例として記憶に新しいのが、東日本大震災の直後に起きた、みずほ銀行の大規模なシステム障害だ。ただ、規模の違いこそあれ、今年4月には三菱東京UFJ銀行と三井住友銀行もそろってシステム障害に陥っている。高度化と複雑化を繰り返す基幹システムは、多くの銀行にとって、いつ牙をむくか分からない“魔物”といえた。