なお、教育投資が有効な先行投資であることは、アメリカの調査結果で実際に証明されています。アメリカが1960年代に実施した、低所得者を対象にした教育政策「ペリー就学前教育計画」の追跡調査を行なったところ、計画の対象者と非対象者では成人後、所得や生活保護受給率に大きな差が出ており、質の高い幼児教育を受けることは人生を豊かにするだけでなく、国が負担する社会保障費も軽減されることが明らかになっているのです。その意味でも教育投資は不可欠であり、それを国民に納得、理解してもらえるような財源案をこれからどんどん出していきたいと思っています。

家庭を圧迫し続ける
子どもの教育費負担

――ただし今後、少子化による人口減少と超高齢化社会による社会保障の増大がこれだけ見込まれると、限られた税収のなかでの財源確保はそう簡単ではない気がします。また最近では、子どもを持たない人も増えています。そんななかで、どうやって多くの国民に納得してもらうかは、民主主義の良さでもあるが難しさでもある。これについては、今後どのように国民に問いかけていくつもりですか。

下村 ちなみに、結婚した夫婦が理想とする子どもの数は2.42人、しかし実際は1.96人です。それはやはり、多くの人が教育に対する経済的負担を不安に感じているからだと思います。つまり1人当たりの教育が高すぎるということ。たとえば子どもを大学卒業させるまでに必要な教育費は、小中学校は公立で、幼稚園・高校・大学は私立に行ったとして1人1300万円。これに加えて、東京に下宿させるとなったら1300万円ではとても済まないですね。さらに2人となれば最低2600万円。これでは、普通の家庭でもなかなか厳しい額です。こうした教育費の負担が少子化の要因の1つになっているのだと思います。

 だからこそ、家庭の負担を減らし、国の負担を増やさなければならないと私は思います。そうすることによって、子どもの数が本来生みたいと考える2.42人に近づくようになれば、人口動態も変わります。2060年で800万人程度増えるという試算も出ているんですね。また、それにより、長期的に見れば、GDPも年間50兆円から70兆円くらい上乗せすることもできます。その意味では、経済学でいう乗数効果の点で見ると、公共投資よりも効果は高い。時間はかかりますけど。でも、こうした経済的観点も含めて、教育投資というものが非常に有効な未来への投資であるという、社会のコンセンサスにしたいですね。

究極の規制緩和策
「バウチャー制度」とは?

――前著『下村博文の教育立国論』のなかで、ご自身がめざされている教育改革の最終的な姿の1つとして、「教育バウチャー制度」の話がありました。クーポン券という形で家庭に一定の教育財源を渡すことで自由に学校選択ができるというこの仕組みは、ある意味、教育における究極の規制緩和ではないかと思います。これについては実現性も含め、どのように考えていますか。