人事というと、従業員を管理する部署という認識を持つ人も多いのではないだろうか。
これに対し、NKKやGEで人事の要職を歴任し、現在はLIXILグループで執行役および人事の責任者を担う八木洋介氏は、「人事は戦略部門」だと語る。
では具体的に何をするのが、経営に資する、「戦略部門としての人事」なのだろうか。八木氏自ら解説する。(構成:赤堀たか子) 

人事は何をする部門か

 “経営に資する人事”とは、人事戦略を実行する人事、ですが、ではこの「人事戦略」とは何か。

 いろいろ言う人がいますが、端的に言えば「最高のパフォーマンスを出すために、人と組織をどう使うかということを考える」ことだと私は考えています。

 より具体的には、9つの要素を実践することです。

(1)社長をつくる
(2)会社のミッション・ビジョンを伝え、徹底する
(3)戦略を、心を震わすストーリーに変える
(4)さぼらせない仕組みを回す
(5)組織のレイヤーを減らす
(6)人を活かし、育てる
(7)モチベーションを高める
(8)勝つためのカルチャーをつくる
(9)エンゲージメント、愛着心を育む

 これら9つの要素については、この連載で追々説明していきますが、その前にまず、「人事の役割」について、私の考えを述べたいと思います。

人の活力を引き出す

 “人事”と言う時、一般的には、人事管理のことを意味します。

「人事とは、どんなことをしている部署ですか?」と聞かれたら、大抵の人は、「採用、評価、異動や給料を決める」などと答えるでしょう。採用、評価、処遇――これらは、全て人事管理であり、人をどう“管理”するかという、ちょっと“上から目線”的な仕事のことを言うのです。

 これに対して、私が考える人事とは、「人の活力を引き出す」もの。

 例えば、ミネラルウォーターに「君、おいしいね」と言ったところで、当然ですが味が変わることはありません。しかし、自分の周りのスタッフに、「この企画、やってくれてありがとう。とてもよかったよ」と言ったら、彼ら彼女らは次の日からもっとやる気になるでしょう。

 あなたも、朝、誰かに「おはよう。なんか元気がないけど、どうしたの?」と声をかけられた時と、知らん顔して通り過ぎられた時とでは、気分が大きく異なるでしょう。