その世界進出で、何が変わるのかという視点
世界進出を考える際に、大事にしたいことがある。単に自らのエゴではなく、それで何が変わるのかという観点である。
以前、私は大企業で採用担当者をしていたが、ある年、大手各社の担当者が勢揃いした学生向けのパネルディスカッションで隣に座ったトヨタ自動車の方が言っていた一言を思い出す。
「トヨタがその国に進出することが、どういうことなのか、学生の皆さんはぜひ考えてみてください」
こんな内容だった。つまり、新興国にトヨタが進出することによって、雇用も生まれるし、経済的にも豊かになるし、何よりもクルマのある生活が進んで行くということである。
同じことが、この本にも書かれていた。印象に残ったのが、NOBUができるとその街が変わるというエピソードだ。元々、このエピソードを松久信幸氏に伝えたのは、マドンナだと言う。
ニューヨークではさびれた倉庫街だったトライベッカが活性化し、にぎやかになった。ロンドンではパークレーンという高級ホテルが立ち並ぶ通りにNOBUがオープンして、その一帯の和食レストランのレベルが上がった。バハマでは、NOBU以外のレストランのサービスが向上した。ミラノに進出したことで、生の魚を食べる文化が盛り上がった、などである。
世界を目指す人は素敵だ。そして、包丁一つで世界を変えていったストーリーは実に痛快である。