チームのダイナミクス

 松久信幸は、努力の人である。と同時に、素晴らしい仲間に恵まれていると感じた次第だ。努力している人のことは、誰かが見ている。そして、助けてくれる。

 一緒にNYで店を持つことを持ちかけ、最初のラブコールから4年待ち、今でもNOBUを一緒に世界に展開しているロバート・デ・ニーロを始め、投資家のメイヤー・テッパー、レストランマネジメントのプロであるドゥリュー・ニーポレントという仲間たちが彼を支えている。さらには、日本での駆け出しの頃も、ペルーに進出した際も、誰かが松久信幸の努力と才能を見て、応援していた。

 この本で、彼は人からサポートを受けたことをまったく隠していない。一人で出来ることは、たかが知れている。この社会を生き抜くためにはチームが必要だ。人と人とが生み出す、ダイナミクス。これがこの本の読みどころの一つだろう。

 自分一人で喜ぶ仕事よりも、みんなでガッツポーズできる仕事の方が面白い。そんなチームのダイナミクスを感じる本である。

 和食を基本とした技は磨きつつも、各国の文化を柔軟に受け入れる姿勢が、いい。松久信幸氏の生き方であり、NOBUで出る料理にも現れている。

 グローバル人材なる言葉の大合唱の今日このごろだが、世界で活躍するヒント、負けない日本人になるためのポイントがこの本には詰まっている。何より、泣けて、笑えて、元気が出る。