上海出張のついでに香港と広州に立ち寄った。こう書くと、なぜ遠回りをするのかと怪しまれてしまいそうだ。しかし、実際の旅行行程がこうである以上、このように書きだすしかないと思う。

サービスが低下した高級ホテル

 宿泊したホテルは、1997年香港返還のセレモニーが行われた会場のすぐそばにあり、交通の便もさることながら、客室からの眺めも最高である。窓の外はスターフェリーが渡るビクトリアハーバーが広がっている。向こう岸となる九龍半島、新しい高層ビルが目立つようになった尖沙咀(チムサーチョイ)など、香港を代表する光景を眺めるのが好きだ。これまで何度も利用していたところで、私が好きな香港の高級ホテルの一つでもある。

 しかし、今回、泊ってみたら、宿泊料が相当上がっていたのに、同ホテルに宿泊できた喜びはむしろ半減してしまった。確かに北京語による会話についてはだいぶ不自由なくなったが、サービスの低下には目を覆いたくなるところがかなりあった。ティッシュペーパは2、3枚使うと、底をついてしまう。備品は用意されていない。到着したお客さんは、必ず「荷物を部屋まで持って行くのか」と確かめられていた。言い換えれば、「チップが要るよ」と言わんばかりの態度に辟易してしまう。

公共トイレは学生寮の洗面所のよう

 ホテル内のサービスだけではなく、町の雰囲気も変わった。香港島中心部の金鐘は英語ではアドミラルティと呼ばれているところで、銀行や大手会社も集中する官庁街である。実は、この「アドミラルティ(Admiralty)」という名は、かつて同地にあったイギリス海軍の基地名 (Admiralty Dock) に由来する。

 しかし、最近、金鐘あたりは学生たちに不法に占領されている。2017年の香港特別行政区長官の選出方法をめぐって、政府の対応に怒った学生たちと一部の市民は多くの多国籍金融機関の本部がある中心商業地区の中環(セントラル)を麻痺させようと抗議行動に出た。これがいわゆる「占中」という抗議行動だ。一時10万人に及んだ抗議集会の規模は現在、かなり縮小したが、依然として金鐘あたりの路面を占拠したままである。